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所長のブログ~ただ今修行中

2017.03.20 グループ/講座
3月の『心的外傷と回復』読書会は・・

週末から三日間、日中はぽかぽか陽気で気分も心地よく過ごすことができましたが、皆さまはいかがお過ごしでしたでしょうか。

土曜日は研究所での面接、日曜日の午後は『心的外傷と回復』女性のトラウマ読書会、その後実家に一泊で帰り月曜日の晩に大阪に戻り・・と、あっという間に連休が過ぎました。

昨日の『心的外傷と回復』女性のトラウマ読書会は、最終章の「共世界」(human commonality)がテーマ。

外傷的事件は個人と社会とをつなぐきずなを破壊します。トラウマ体験の中核は孤立無援感と無力化であるため、トラウマからの回復は「つながりの回復」とエンパワメントにあります。この章では特に、グループ体験の治癒力と、回復の段階ごとのグループについて学びました。

被害者は、ある人が惜しみない度量で自然体で示してくれた、ごくふつうの愛他性(相手の身になって考え相手本位で行動すること)によって、それを鏡として自らの失われた部分を認め、それを取り戻し、そしてその瞬間から人間の共世界(human commonality)に再加入しはじめると言います。

社会のきずなの取り戻しは「一人ではない」という発見を以て始まり、この体験が確実、強力、直接的なのはグループをおいて他にはないと、著者のハーマンは言います。グループの治癒力はその「普遍性体験」にあります。

私自身はこの章を読みながら、女性ライフサイクル研究所の過去から現在までの「グループ体験」が頭の中を駆け巡り、次年度に計画しているグループについても思い巡らせました。

・・・その背景には、ちょうど先日、研究所とNPOについて話を聞きたいと、台湾からのお客様があり(村本が台湾の女性支援機関を訪問したご縁です→★)、1990年から現在までを振り返ると同時に原点の感覚を思い出したことにもよります。

原点の感覚とは、「個人的なことは社会的なこと」と本当にいろんなこと、女性としての体験を語り合ったことです。当時は子育てについて悩み、仕事と子育てに葛藤を抱えていましたが、語り合う中で、「私だけじゃないんだ」「一人じゃないんだ」と普遍性の体験を実感しました。それは、私は私らしく生きていいんだと自己肯定感の回復へとつながりました。それはシスターフッド(女同士の友情)によって支えられていました。
・・・そんなことをこの数日振り返りながら、これからのことを思いめぐらしていました。

読書会が終わった後、4月から3クール目がスタートする読書会の持ち方について、スタッフで話し合いました。この二年間は、私たちが支援者の方と共に本書を元に勉強しシェアすることに重きを置いていましたが、4月からは少し間口を拡げて開催していくことになりました。

この読書会が、虐待、DV、性暴力被害者のトラウマと回復について関心をもっている方々が人や社会とつながる一つの「場」として、提供できればいいなと思います。

この一年、春、夏、秋、冬が過ぎて、また新たな春が訪れました。一つのサイクルが巡り、4月からまた新たなサイクルがスタートすることをしみじみと有り難く、嬉しく思います。


             昨年の10月から次々と新しい芽が出て、花を絶やさず咲き続けてきたシクラメン、すごい!
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2017.02.20 グループ/講座
2月の女性のトラウマ読書会は・・

昨日、2月19日(日)の午後は、『心的外傷と回復』を読む、女性のトラウマ読書会でした。
今回は回復の第三段階「再結合」がテーマでした。

回復の第一段階の「安全の確立」、第二段階の「想起と服喪追悼」(トラウマ的な出来事の記憶を再構成し人生に統合する)の後には、回復の第三段階は「再結合」が課題となります。

第三段階では、外傷的な過去の出来事に決着をつけた後、未来を創造するという課題が待ち構えています。新しい自己を成長させ、新しい人間関係を育て、自分を支える信念を改めて発見することが課題です。新しく創った安全の基地から出て、世界に積極的にかかわり、試行錯誤し、現実生活の場で力を持つことに取り組みます。そして、自分自身と和解すること、他者との信頼関係を深めること等について、学びました。

この章の最後には、心理学者メアリー・ハーべイの「トラウマ解消の7つの基準」が紹介されています。

第一はPTSD症状が管理できる範囲に収まっていること
第二はトラウマ記憶と結びついている感情に耐える力をもつようになっていること
第三は記憶の支配権を持つようになっていること(思い出すかどうかを自分で選択できる)
第四はトラウマ的出来事の記憶が首尾一貫した語りものになっていること、それに相応した感情が結びついていること
第五は自己評価の損なわれた分が回復していること
第六は重要な対人関係が再建されていること
第七は意味と信念の首尾一貫したシステムが再建され、外傷ストーリーも包含していること

トラウマの解消に完全はなく、発達の新しい段階に入るとトラウマ記憶が蘇り症状が再発することもありえます。といっても解消のもっともよい指標は、生活のなかで楽しみを味わう能力と自分以外の人々との関係に全面的に入る能力とを取り戻しているかどうかです。過去よりも現在と未来に多くの関心をもち、世間に近づくのに恐怖よりも讃嘆と畏怖とを以てするようになると言います。

毎回、読み直すたびに気づき、発見があり、日頃の臨床を振り返る機会になっています。
しかしこれは決して一人ではできないこと。グループで話あうからこそ生まれる気づきであり、発見であり、自分のなかに消化されていくのだと思います。今回もそれを実感して、「わかちあう」ことができることは本当にありがたいことと、参加者の皆さまに感謝です。

一年を通して読み進めてきた『心的外傷と回復』読書会も、来月はいよいよ最終章です。
次回のテーマは「共世界」。グループについて、つながりの回復について・・振り返ることを楽しみにしています。

なお、ハーベイによるトラウマからの回復の定義については、当研究所のホームページでも紹介しています。関心のある方はこちらも合わせてお読みください。
→「生態学的視点から見たトラウマと回復」(ハーベイ著、村本邦子訳)
→「トラウマからの回復とレジリエンス・モデル~回復の三段階と八次元


            この日、女性ライフサイクル研究所の前のバス通りから。
                   いいお天気で気持ちよかったです。
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2016.12.11 日々のこと
12月の『心的外傷と回復』読書会は・・

あっという間に12月も三分の一が過ぎました。今日は晴れて気持ちのよいお天気でしたが、12月らしい寒い一日。

前回のブログから二週間がたちましたが、この間、外での活動では、11月末に保育所での保護者向け講座「イライラしない子育て」の講師を務め、先週末は京都に出向きアタッチメント・セミナーに参加しました。そして本日午後からは、『心的外傷と回復』女性のトラウマ読書会。今日は第8章の「安全」を読みあいました。

「安全」とは、身体の安全、環境の安全のことで、トラウマからの回復過程における最初の課題となります。回復の第一段階の課題「安全の確立」は、まず身体の自己コントロールに焦点をあて、次第に環境に焦点を移すと言います。睡眠、食欲、運動、PTSD(外傷後ストレス障害)のマネージメント、自己破壊的行動のコントロールなど身体のコントロールに始まり、安全な生活状況を樹立し、経済的安全をはかり、自己防御計画をたてることが課題となります。

「いかなる人も独りだけで安全な環境を打ち立てることは不可能である」ので、「適切十分な安全計画をつくるには社会側の支援が不可欠」です。外傷症候群は総合的な治療として、生物学的、心理的、社会的要素のすべてに対して行わなければならないと言います。

トラウマ記憶に取り組む前に、「安全を確立」し安定化をはかることの重要性と、そのためには社会的支援が必要であることを再確認しました。

ところで、読書会などグループや講座は、研究所のグループルームで行っていますが、今日はとても温度が下がっていたので、エアコンと暖房カーペットに加えて「ひざ掛け」も用意。下から体がポカポカ温まり、まるで皆でコタツに入っているようで、心もほっこり。寒さが厳しいときほど、人と一緒に温もるっていいなぁ~と、身も心も温まる時間でした。次回の読書会は来年一月です。

              アタッチメントセミナーの帰り、京都駅ビルから
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2016.11.13 グループ/講座
11月の『心的外傷と回復』読書会を開催しました

今日も朝からいいお天気。日中の最高気温は22.8度と温かい一日になりました。
午後は『心的外傷と回復』読書会。今日の読み合いは「第七章 治癒的関係とは」。

回復のための第一原則はエンパワメントであり、サバイバーが回復の主体でありつづけること、もう一つの原則は自己統御権、自己決定権を取り戻すことであると言います。

「回復は人間関係を網の目にしてはじめて起こり、孤立状態では起こらない。」と、他者との新しい結びを創ることも回復の基礎となります。

そしてこの章では、治療関係において起こる外傷性転移(来談者の情緒反応)、逆転移(治療者の情緒反応)について詳しく説明されています。どちらも良質の治療関係の発展を妨げますが、避けられません。なので予防のためには、クライエントと治療者双方の安全を保障するものとして、治療契約と治療者に対するサポートシステムが大切であると書かれています。

グループで話し合う中で、境界と柔軟性、一緒に話し合うことの大切さを再認識。協働するということについて整理することができました。私にとってこの読書会は、サポートシステムの一つになっています。支援者の方々と学び、体験を共有することで、また頑張っていこうと力づけられています。


次回は12月第二日曜日、回復の第一段階「安全」がテーマです。関心のある方はぜひご参加ください♪

※読書会について詳しくはこちら→支援者支援『心的外傷と回復』を読む~女性のトラウマ読書会のご案内
※トラウマと回復の段階について詳しいことはこちら→トラウマからの回復とレジリエンス・モデル~回復の三段階と8次元

                                     ミントとイタリアンパセリ、植え替えるとどんどん大きくなっています!すごい
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2016.10.30 グループ/講座
10月『心的外傷と回復』読書会&第5回CAREワークショップを開催しました!

昨日に引き続き、今日も気持ちのいいお天気。昨日土曜日の夜間は支援者向けCAREワークショップ、本日の日曜日は午後から『心的外傷と回復』女性のトラウマ読書会でした。

『心的外傷と回復』読書会の読みあいは、第6章「新しい診断名を提案する」。虐待やDVなど、恐怖に晒され自由をはく奪された被害者のトラウマ症状は、PTSD(外傷後ストレス障害)や他の診断名では説明できないと、複雑性PTSDが提案されるに至った経緯について学びました。

本の内容は重いですが、参加者でそれぞれの経験を分かち合うことは視野が広がりますし、希望を感じる場です。研究所が面しているバス通りは日曜日は比較的静かなので(商店街は賑わっていますが)、沈静しつつもほっこりした時間となっています。ご参加くださいました皆様、ありがとうございました。

それから・・、土曜日は18:30-21:30まで、第5回目の支援者向けCAREワークショップを開催しました。定員8名の研修ですが、ありがたいことに募集してすぐ満員御礼に。
トラウマ予防の取り組みとしてCARE(&PCIT)を学んできましたが、口コミでCAREに関心を持って下さる方が増えて嬉しく思います。今回は、心理、教育、福祉分野で子どもと関わる支援者の皆様がご参加くださり、和気あいあいとした温かい雰囲気のなかで学びあいました。

CAREワークショップの特徴はロールプレイ。今回も、「ロールプレイで子どもを役をしたことが何より学びになった」等、感想をいただきましたが、CAREプログラムは体験から学べるよう工夫されています。

私もそうでしたが、子どもの役になってみることで、大人の関わり方一つでこんなに気持ちが温かくなり、自分が「まとまる」(安心して集中できる)感じになれものだと実感します。一日5分でいい、というのもミソです。

「ダメでしょ」「どうしてこれができないの」など、何度言っても子どもがきいてくれなくて困る・・というのは大人が経験するよくある悩み。つい悪循環してしまいますが、そんなときにもCAREがヒントを教えてくれています。CAREでは子どもが言うことをきいてくれやすくなるコツが詰まっているのです。

さて、大人と子どもの遊びの場面のロールプレイでは、一緒にそばにいる私もほっこり温かい気持ちになってきました。CAREで教えてくれている「子どもとの間に温かい絆をつくるコミュニケーション」が拡がっていくといいな~と思います。3時間、熱心にご参加くださいました参加者の皆さまには心から感謝いたします。

保護者の皆さまには、子育てや子どもの相談のなかで、必要に応じてCAREプログラムを提供させていただいていますので、関心のある方はお気軽にお問い合わせください。

              研究所の玄関の照明がLEDに。明るい!
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2016.10.02 グループ/講座
今月の『心的外傷と回復』読書会

あっという間に10月になりました。今日は10月とは思えないような蒸し暑い一日でした。
午後からは『心的外傷と回復』女性のトラウマ読書会でしたが、今日の読みあいは、第五章「児童虐待」。

この章では、児童虐待が子どもにどのような心理的影響を与えるのか、児童期の慢性的・反復的トラウマについて、生存者の証言や研究をもとに詳しく書かれています。

虐待者と一次的愛着を保つために子どもは様々な心理的防衛を働かせること、解離による虐待の否認、「もう一人の自分」たち(断片的人格)の発生、自分は「生まれつきの悪い子」という自己感覚の発達、またそれをカバーするために「いい子」であろうと努力し続ける等、アイデンティティの問題や人格の断片化が起こること、そしてそれは成人してからも対人関係を妨げるということを再確認しました。

週末、DVの子どもへの影響についてインタビューを受けた記事が配信されましたが(→詳しくはこちら)、DVも子どもにとっては虐待的環境です。虐待・DVが起こっている家庭は世間から孤立していますが、子どものSOSのサインに周囲が気づくことができればと思います。

この読書会は13時半からスタートし、15時までのグループですが、いつもお昼に集合して、スタッフと一緒に「場」を整えて準備します。日曜日は平日とは違って、時間がゆったりと流れるように感じます。ほんの僅かな時間でも、ゆったりした時間の流れを感じると、ほっと一息つきます。参加者の皆さまも楽しみにして下さっていることを嬉しく思います。

明日からまた一週間が始まります。日々の臨床をコツコツと積み重ねていきたいと思います。

             少し曇り空、公園も静かでした。
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2016.03.13 グループ/講座
読書会『心的外傷と回復』1クール目を修了しました

今日は『心的外傷と回復 』読書会、1クール目の最終回でした。読書会は昨年5月に第一章からスタートし、月に一回一章ずつ読み進めてきました。今日は最終章の第11章「共世界」と初版から5年後に追加された「付・外傷の弁証法は続いている」を読みあいました。

回復の最終段階のテーマは「共世界」、社会との絆を取り戻すことです。「共世界」は、翻訳者の中井久夫先生がcommonarity(コモナリティ)を翻訳した言葉ですが、意味深いです。

トラウマ的出来事は個人と社会の絆を破壊し、被害者を孤立化させます。本章では、社会との絆の取戻しは「私は一人ではない」という発見をもってはじまること、この体験が確実、強力、直接的なのは「グループをおいて他にはない」と、「普遍性の体験」というグループの力を引き出す回復段階に応じた様々なグループ療法について詳しく紹介されていました。

本章の最後はまた意味深い言葉で締めくくられています。「自分以外の人々とともに共世界を作ると、それに伴って「common」という言葉の持つすべての意味がわかるようになる」、それは、一つの社会に帰属するということ、一つの公的役割をもつということ、普遍的なものの一部であるということ・・、習慣的なこと、ありふれたこと、普通のこと、日々の暮らしに参加するということ、、等を意味しており、「他の人々との共世界をつくりおえた生存者は生みの苦しみを終えて憩うことができる」と言います。

回復をし終えるとはそういうことなのだ・・とこの本の言葉とクライエントさんの言葉(体験であり証言でもあり)とが重なりました。回復とは、ただトラウマの精神症状がよくなる、ということだけではなく、自己への信頼が回復し、人とのつながりが回復し、社会とのつながりが回復し・・、その方が日々の生活で憩うことができるようになること・・、本当にそうだなと思います。被害者の方が心から憩う日が訪れますことを心から願います。

また、この読書会のグループも、とてもエンパワメントの場でした。被害者の支援に携わる方々との「つながり」と「絆」を感じることができて、私にとってもエンパワーされる場でした。感謝の気持ちで最後はじーんと感慨深かったです。ご参加くださった皆様、ありがとうございました!

次年度5/8(日)より、読書会の2クール目がスタートします。詳しくは、追ってホームページにアップしますので、またチェックしてみてください。一つ一つ、学習と分かち合いを積み重ねていきたいと思いますので、ご支援のほどよろしくお願いいたします。

             2012年ボストン「Central Street Health Center」にて 
               ハーマンさんとお会いできたことを思い出しました    
DSCF3238 (250x188).jpg              同じく2012年に訪問したボストン・トラウマセンター。
              研修で学ばせて頂いたことを役立てていければ・・と改めて思いました。
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2016.01.12 グループ/講座
児童期~思春期の子どもとのコミュニケーションのヒントに!

 今日の夜は、新年初のスタッフ会議。皆で持ち寄ったお菓子を頂きながら、もろもろ議題の後、「思春期の子どもをもつ保護者向けCAREワークショップ」の準備。

 これまで幼児~学童期の子ども向け」で実施してきましたが、今回は初めて「思春期バージョン」のワークショップとなるので、思春期の子どもの特徴も踏まえながら、コミュニケーションの具体例を見直したり検討したり・・、資料づくりにいそしみました。

 今日はワークショップについて少しご紹介・・を。
 思春期というと、中学生・高校生を思い浮かべると思いますが、思春期とは子どもから大人への移行期です。思春期はいきなりやってくるのではなく、小学生の頃から少しずつ始まっています。
 細かくみていくと・・、プレ思春期が9~10歳、前思春期が10-12歳、思春期前期が12-14歳、思春期中期が15-17歳、思春期後期が17~成人までで(もちろん個人差が大きいので年齢は目安ですが)、それぞれの時期に発達課題があります。

 思春期というと私は「さなぎの時期」をイメージします。さなぎの時期を経て、やがて蝶に成長するように、思春期の子どもも、外からみるとよくわからないけど、その内側ではとても大きな質的な変化が起こっているのです。

 実際には、「何を考えているかわからない」「何かとツンケンしてるので、なんと言葉をかけていいか・・」など、コミュニケーションに戸惑うこともあると思います。そんなとき、CAREプログラムが役に立つかもしません。
 CAREプログラムとは、子どもとの「絆」を強めるコミュニケーション・プログラムで、思春期の子どもの成長を見守るためには、過干渉でもなく放任でもなく、親と子の「絆」が大切にしたコミュニケーションが役立つと思います。いくら子どもが反発していたとしても、子どもは大人からの温かい眼差しと関心を必要としているからです。

 このテーマに関心をもつ子育て中の方なら誰でもご参加いただけますので、ぜひお役立てくださいませ。CAREワークショップについて、詳しくはこちらをご覧ください。⇒「CARE・思春期の子どもをもつ保護者向けワークショップ


          おススメ図書!  FLC21子育てナビシリーズ『思春期の危機と子育て』もどうぞ!IMG_0957 (2).jpg

2016.01.10 グループ/講座
心的外傷と回復~ストーリーを再構成する

年明けから温かい日が続いていましたが、週末より冷え込みが厳しくなってきました。

今日は今年最初の『心的外傷と回復』読書会。今回は第九章「想起と服喪追悼」の読み合わせで、回復の第二段階について、外傷のストーリーを再構成して語り、生活史全体に統合するという作業について学びました。トラウマ体験と対決するという作業に進むかどうかの選択は、被害経験者にゆだねられますが、大変な作業であるからこそ慎重に準備され構造化されていることが大事なこと、その手順や意味、エッセンスについて再認識しました。

10数年前からトラウマ臨床に携わるようになり、私自身のなかにはずっと「問い」がありました。トラウマは「語れない記憶」であるので、その語れないトラウマ記憶をどう扱い(安全に)、それをどう語り人生に統合していけるのか・・?と。この十数年、その答えを求めるように試行錯誤をしてきましたが、そのなかでEMDRソマティック・エクスペリエンス(SE)など身体志向のアプローチに出会ってきました。

原書の初版が刊行されたのが1992年、後に刊行された同書の『増補版』では、その後の脳科学の進歩によって生物学的側面からの理解が進んできたことが、しっかりと加筆されています。解離の解明についても。

生物学的理解、つまり「心と身体はつながってる」と身体的側面からのアプローチは臨床において重要と思っていますが、ハーマンさんが言うように、心理的、社会的側面からの理解も同様に重要である思います。人間の「全体性」に目を向けて、心と身体のつながり、人と人とのつながり、世界とのつながり・・を大切にできるよう努めていきたいと思います。

1人で読むのではなく、皆で読みあう場があって、温かいつながりのなかで、いろいろと考えたり、見直したり、気づいたり・・できることに感謝です。
感謝の気持ちと共に、気を引き締めて、また次の読書会まで一カ月、頑張っていこう~と思います。


※「回復の三段階」についてはこちらをご参照ください⇒「トラウマからの回復とレジリエンスモデル~回復の3段階と8次元

               カンガルー・アイビーってすごい。大きく広がってきたので白い花台に。
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2015.12.13 グループ/講座
トラウマと回復~「安全の確立」について学ぶ


第二日曜日は月一回開催している『心的外傷と回復』読書会。今日は「第8章安全」についての読みあいでした。

この章では、回復の第一段階の中心課題である「安全の確立」について、「問題に名を与える」「自己統御の回復」「安全な環境を創る」「第一段階を完了するには」を柱に、詳しく学びました。

毎回この読書会では、私自身がトラウマ臨床について再確認し、さまざまな気づきをもたらしてくれていますが、今回は特に、グループで分かち合いを通して、他職種との連携や協働についても考える機会となりました。

「何びとといえども単独で外傷と対決することはできない」とハーマンさんも言っていますが(P238)、DVや虐待、性暴力などトラウマ被害者への支援の際に、他職種との連携、協働が大事と言われます。そのためには、連携・協働の前提として、トラウマ被害者への共通理解がとても大切であることを、再認識しました。

というのも、回復の第一段階の中心課題である「安全の確立」には、自己コントロールの回復から安全な環境作りまで含みます。外傷は生物学的、心理的、対人的、社会的な面までおかすことから、適切な治療はそれぞれの側面に対して行われる必要があり、総合的でなければならないと言います。

ということは複雑なトラウマであるほど、同時にたくさんの支援も必要だと言えます。医療、福祉、司法、心理、教育・・などの側面での支援から、友達、家族、親戚など身近な人からの支援まで・・連携していく必要があるでしょう。連携においては、「トラウマ被害者への共通理解・共通認識」のために、他の人々に理解を促すための働きかけも重要となってくるでしょう。

「トラウマ・インフォームド」という言葉があります。数年前、ボストンのトラウマセンターに、虐待を受けた子どものトラウマ研修で訪れた際に学んだ言葉ですが、「トラウマについて知識を持ち、その対応法について詳しく知っている」と定義されていました。センターでは、虐待を受けた子どもの治療的支援として「安全を守る環境づくり」のため、子どもと関わる多職種や家族や親戚含め、トラウマ・インフォームドを目指して、組織的に取り組まれていました。

今回、この読書会が「トラウマ・インフォームド」の場として、活かされていけばいいなという希望を思い描きました。職種や立場の違いを越えて互いの仕事・役割について学びあい理解し、トラウマについて共通認識にたてるよう、連携・協働の基盤を作っていく・・・、その一つになればいいなと思います。

来週、DVトラウマについてお話をさせていただく講師の仕事が入っています。トラウマ・インフォームドの機会となるよう、自分が学んできたことを少しでも還元できばいいな・・と、気を引き締めて臨みたいと思います。


[関連記事]
2014年4月カウンセリング「トラウマからの回復とレジリエンス・モデル~回復の3段階と8次元
2012年7月FLCエッセイ「ボストン・トラウマセンター研修に参加して
1999年11月年報「生態学的視点から見たトラウマと回復

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