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FLCスタッフエッセイ

2016.08.31 子ども/子育て
アメリカでの出産で感じたこと - サポーターの大切さ

                                                             金山あき子

 

私は6年ほど前に、アメリカで出産を体験しました。異国の地での出産というのもあったのですが、なにせお産自体が初めての体験だったので、未知なる世界に入っていくような、期待と不安の入り混ざった心地で、アメリカと日本の習慣との違いなどを発見しては、驚いたり、感心したりの日々を過ごしていました。

 

妊娠〜出産期を通じて、何より驚いたのは、アメリカでの出産と育児における、「夫」の役割の大きさについてでした。妻の妊娠中の病院の検診にも、ほとんどの夫が毎回一緒に来ているのにも驚いたのですが 、それだけではありません。出産〜子育ての流れや心構えなどを教えてもらう教室は、アメリカでは「両親教室」しかなく、夫婦二人で通うこととなっていました。両親教室ではまず、夫たちは、妊娠中の妻のお腹がどれだけ重くて動きにくいかを体感/共感するために、おもりのついた大きな服を着て歩き回るワークをします。そして、お産の流れなどの勉強と共により実用的なワークに移り、陣痛時のマッサージの仕方を妻とペアで練習したり、赤ちゃんの人形を使ってオムツの替え方、お風呂の入れ方 などを、数ヶ月に渡って、何度も何度もペアでワークしていきました。

 

ここで教えてもらったことは、実際に出産時や産後の子育てにとても役に立ったし、何より、出産後、夫がすぐにオムツ替え、お風呂を入れるのも当たり前といった意識になっていることに一役買ってくれたな・・と実感しました。お産の前から夫を育児に巻き込んでゆき、夫を子育ての重要な「当事者」とみなしていくやり方は、その後の育児における夫からのサポートを、よりスムーズにしているなあ、と思いました。

子育てにおける夫の役割が特に重視されるのは、アメリカでは、日本のように「里帰り出産」をして、母からサポートしてもらう風習があまりないこと、共働きの家が多いことも関係しているようです。そんな事情から、アメリカでは出産時にまずは夫、そして友人や、住んでいるコミュニティー、ベビーシッターなどのサポートが、より重要になっているのを感じました。

 

当時私が住んでいた町のコミュニティーでは、誰かに赤ちゃんが生まれたら、近所の友人たちは、赤ちゃん誕生のお知らせと共に、「meal train (ミール・トレイン)」と言って、毎日誰かが一品ずつ、おかずを届けてあげる当番を決めるメールを送り合いました。私自身も、新生児を抱えての忙しさや不安にぼう然・・としていた頃、友人たちが食べ物や、おかずを代わる代わる持ってきてくれた際には、涙が出るほどうれしく、本当に助かりました。料理を持ってきてくれること自体も嬉しかったですが、その際に、赤ちゃんの顔を見がてら、何気ない話をしていってくれたりするのが、すごく息抜きになったのを思い出します。また、その町の、子育て支援センターのような場所で、「Doula(ドューラ)」と呼ばれる、お産の支援者の女性と知り合ったことも、大きな助けになりました。そのセンターでは、子どもを連れてのヨガ教室や、出産体験の話を分かち合うグループ、子どものプレイグループなどがあり、そういったプログラムに参加したことが、産後のしんどさや不安をへらし、気分転換するのにとても助けになりました。当時私が住んでいたのが、アメリカでも田舎のほうだったため、コミュニティー内のつながりが比較的強い事もあったかもしれませんが、こういったつながりの場がある事が、どれだけ助けになるのかを実感しました 。

 

「妊娠・出産」は、大きな変化の時期であり、お母さん達にとっては「危機」とも言われるほど、大変な時期となります。こうした時期に、周囲からのサポートが少しでも増えることで、子どもへの対応に余裕が出てくることを、自分自身何度も体験してきました。国や文化がどれだけ違っても、「子育て」が「孤(こ)育て(孤立した中での子育て)」になってゆくと、お母さんはいつの間にか追い詰められ、子育てに困難が出てくるのは、各国共通です。現代では、核家族化や少子化が進む中、ほとんどのお母さんが、子育ての中で、子どもと一緒なのになぜか取り残されたような「孤独」を味わう瞬間があるように思います。なぜだかわからないけれど、無性に子どもにイライラするという時、もしかしたら一人で色々なことを背負いすぎているのかもしれません。 そんなとき、何か、小さなサポートになるもの、ないかな?とまわりを見回してみると、意外なところに「つながり」の種が転がっているかもしれません。 小さくても色々な「つながり」を持つことの大切さを思いおこしつつ、子育てという大仕事に向かう力を、私自身も、蓄えてゆきたいと思います。

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