- 2015.10.28 子ども/子育て
- 大人も子どもも楽しめる絵本のすすめ
福田ちか子
本屋さんで,表紙に惹かれて手に取ったヨシタケシンスケさんの絵本,「りゆうがあります(2015 PHP研究所)」が,とても面白かった。
帯には"ハナをほじったり,びんぼうゆすりをしたり,ごはんをボロボロこぼしたり,ストローをかじったり......。こどもたちが,ついやってしまうクセ。それには,「りゆう」があるんです。""こどもにもいいわけさせてよ"とあった。
大人の目線からみると,注意しがちなこどものクセ。お母さんに見つかってダメよと言われたこどもが,つぎつぎとおもしろおかしい理由を繰り出して"いいわけ"をする。それと向き合うお母さんの表情が,何とも絶妙に,複雑な心境を物語っているのもまた面白い。お母さんが子どもの"いいわけ"や母への反論を,受け流しつつ大人の言い分を伝える場面も、素敵だった。
大人にとって,こどものクセは「大きくなってもそのままだったら...」と心配してしまう不安のタネ。そして小学校の低学年くらいまでの間にしばしば聞かれるこどもの"いいわけ"は,正面切って向き合うと「なんでそんなウソを言うの」「いい加減なことばっかり言って...」と無性に腹が立ったり,「この子大丈夫??」と心配になったりしてしまうやっかいなもの。
そしてこどもにとって,ついやってしまうクセは,何かに夢中になったり他の事に気を取られたりしているときに,無意識に身体が動いてしまう,やったらダメということは知っていても,なんでだかしてしまうもの。少し前にこどもたちの間で流行っていたことばを借りると「妖怪のせい」と言いたくなってしまうほど、わかっているけどどうしようもないもの。
そんなこども気持ちを堂々と代弁してくれているこの絵本は、こどもの強い味方のようでもあり、大人にとっても、お母さんの表情に、わかるわかると共感できたり、ユーモアに肩の力がふっと抜けたりする一冊のように思う。
「やったらダメよ」「は~い...」、「もう、また!」というやり取りを繰り返して大人もこどもも疲れてしまっていたり、なんだか険悪になっているような時に、この一冊を一緒に読むと、ふっとお互いに力が抜けて、気持ちがほぐれることがあるかもしれない。