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FLCスタッフエッセイ

2014.10.06 カウンセリング
女性のストレスとストレスマネジメント

西 順子

 ストレスは、私たちが生きていくうえで避けることができないものです。何か生活に新しいことや変化があり、そのことに適応していかなければならない時、人はストレスを経験します。人は新しい課題に挑戦し、ストレスを乗り越えようとして成長していくものです。しかし、人生にはうまくいくときもあれば、なかなかうまくいかないときもあり、うまく乗り越えられないときには危機的状況となります。ときには予期せずトラウマとなるようなストレスを経験することもあるでしょう。

 女性のストレスには、対人関係、家族やパートナーとの関係からくるストレス、流産、不妊、妊娠・出産にまつわるストレス、育児ストレス、介護ストレス、職場ストレス、大切な人との別れ・・など、人生のライフサイクル上で起こる様々な出来事や状況があります。

 ストレスやトラウマを乗り越えていくには、たくさんの助けやケアが必要です。ここでは、ストレスを乗り越えていけるよう、ストレスと上手につき合う(=ストレスマネジメント)ためのヒントを提供できればと思います。

ストレスとは
 ストレスとは何でしょうか。ストレスという用語は、もともとは物理学の分野で使われていたもので、物体の外側からかけられた圧力によって「ひずみ」が生じた状態を言います。ストレスをゴムボールに例えると、ゴムボールを指で押さえる力を「ストレッサー」と言い、ストレッサーによってゴムボールが歪んだ状態を「ストレス反応」と言います。それをハンス・セリエ博士が生理学の領域で適用したのが始まりです。

 ストレッサ-には、物理的ストレッサー(暑さや寒さ、騒音や混雑など)、化学的ストレッサー(公害物質、薬物、酸素欠乏など)、心理・社会的ストレッサー(人間関係や仕事上の問題、家族の問題など)があります。私たちがストレスと呼んでいるものの多くは、心理・社会的ストレッサーを指しています。
 また、ストレッサーには、日常的に起こる厄介な出来事(デイリーハッスル)やライフイベント(人生のなかでの大きな変化。死別や失業、結婚や就職など良いことも悪いことも含まれます)、トラウマとなりうる出来事(自然災害、人的災害、交通事故、暴力被害など)もあります。

 セリエは「ストレスは人生のスパイス」と言いました。ストレスが適量なスパイスとなれば、人生を豊かに味わい深いものにしてくれます。しかし、ストレスが過剰であったり、ストレスとのつき合い方がうまくいかないと、害が生じてしまいます。心身の健康に影響を与えます。

●ストレス反応
 ストレッサー(ストレス状況)によって引き起こされるストレス反応は、身体面、心理面、行動面に現れます。

身体面:不眠、睡眠過多、食欲不振、食べ過ぎ/飲み過ぎ、下痢/便秘、胃痛、頭痛、
     身体のふしぶしの痛み、肩こり/腰痛、動悸・息切れ、過呼吸・・

心理面:イライラ/怒りっぽい、抑うつ(気分の落ち込み、興味・関心の低下)、不安感/緊張感、     無気力、集中できない、自分を責める、悲観的思考/否定的思考・・

行動面:引きこもり、攻撃的行動(人や物にあたる)、アルコール量やタバコ量の増加、ミスの増      加、能率が悪くなる、遅刻・早退・欠勤の増加、金銭の浪費・・

 ストレスを感じたとき、心や身体が変化するのは自然なことです。ストレス反応はストレスのサインです。何より「気づき」が大切です。ストレス反応は人それぞれ違いますので、自分にはどのようなストレス反応が生じやすいのか、自分の特徴を知っておくとよいでしょう。
 ストレスのサインに気づいたら、ストレス反応が軽減するよう、ストレスと上手くつきあっていくための対処(=コーピング)を工夫してみましょう。

●コーピング
 ストレスに対する対処行動をコーピングと言います。コーピングには主に、問題焦点型コーピング、情動焦点型コーピング、認知に対するコーピング、ソーシャルサポートがあります。

・問題焦点型コーピング:情報を収集して問題の所在を明らかにし、問題そのものを解決しようとする方法です。問題解決のために積極的な行動にでる、話し合う、状況を変化させる・・などがあります。

・情動焦点型コーピング:直面している問題にとらわれないように気晴らしをしたりして、ネガティブな情動的なストレス反応そのものを軽減させる方法です。散歩する、漫画を読む、カラオケ、映画をみる、音楽を聴くなどの気分転換、瞑想や自立訓練法、アロマテラピーなどリラクセーションの方法もあります。睡眠を十分にとること、栄養のある食事、休養や適度な運動なども大切です。

・認知的コーピング:認知とは、ものの考え方や見方のことで、それ感情や気分に影響することがわかっています。私たち誰にでも「認知の癖」がありますが、「バランス良く柔軟な考え方をすること」が大切です。例えば、「失敗してしまった」というとき、「もうダメだ。どうせ私は何をやってもうまくいかない」と考えるとドンドン落ち込みます。でも、「失敗は成功の元。何がよくなかったか原因を考えて、次また活かしていけばいいんだ」と思うと、落ち込みも緩和されるでしょう。

・ソーシャルサポート:友達、家族、職場の同僚や上司など人に相談したり、話を聞いてもらうことです。人は、批判したり否定されたりせずに、「そう思うのね」と肯定して話を聴いてもらえると、それだけでも随分とほっとするものです。あなたが信頼できる人に話を聴いてもらいましょう。助けを借りて、自分を労わりケアしましょう。

 みなさんは日頃、どのようなコーピングを使っていますか?人によって有効な方法は違うので、自分のやりやすい方法を見つけておくことが大切です。ストレスの種類や程度によっても有効なコーピングの方法も違うので、いろいろなコーピングの方法を身につけておくとよいでしょう。

 しかし、対処できないほどのストレッサーを経験したり、ストレッサーが長期間続いたりするとストレス反応も慢性化してしまいます。さまざまなコーピングを使っても症状が長引く場合は、早めに専門家に相談しましょう。

●リラクセーション法
 情動焦点型コーピングの一つ、リラクセーション法を紹介しましょう。リラクセーション法は、ストレス反応を低減させ、リラックス反応を誘導し、心身の回復機能を向上させる方法です。リラックス反応は、環境や刺激が、安全・安心で、脅威でないと判断したときに起きる反応で、副交感神経系の活動が優位な状態にあります。多くの文化圏で古来より様々なリラクセーション法が実施されてきましたが、近年、医学的にもその有効性が確認されています。

 リラクセーション法には、漸進性筋弛緩法(筋肉の緊張と弛緩を繰り返し行うことにより身体のリラックスを導く方法)、呼吸法、アファメーション(自分を励ます言葉を声に出す)、瞑想法、自律訓練法、芳香療法(アロマセラピー)、ヨガなどがあります。ここでは、セルフケアとして簡便にできる呼吸法を紹介しましょう。

腹式呼吸法は、下腹部が膨らんだり、へこんだりするように呼吸する方法です。(臍の上に手をあて)体の力を抜いたまま、口からゆっくりと息を長く吐いていきます。このとき下腹部をへこます感じで息を吐いていき、苦しくならないところで、下腹部を膨らませる気持ちで、鼻から息を自然に吸っていく。これを繰り返していくのが腹式呼吸です。
 吐く息に気持ちを落ち着ける効果があるので、吐く息に注意を向けて、ゆっくりと息を吐いていきます。この時に、「リラ~ックス」「落ち着いて~」と体の緊張も息とともに吐き出すようにイメージしながら脱力すると、リラックス効果が高まります。一回5~10分程度行いましょう。

 ストレスに気づいたら、早目の対処が必要です。女性ライフサイクル研究所では、女性が人生で出会うストレスについて、カウンセリングでのご相談を受けています。心身の健康を回復し、ストレス状況を乗り越えていけるよう、ストレス対処からストレス・ケアまで、共に考えていければと思っています。

参考文献:
『女性ライフサイクル研究13号:特集ライフサイクルにおけるストレス・危機とケア』
『女性ライフサイクル研究19号:からだの声を聴く』
『ストレス・マネジメント入門』中野敬子著、金剛出版。・・など。

2014.08.13 カウンセリング
『モモ』の世界と現代社会 ――時間泥棒...VS心理療法?!――



福田ちか子

 お盆前の多忙な時期,気がつけば,「最近忙しくて~できないなぁ」とか,「なんか楽しいことないかなぁ」とつぶやいている。 そんなおり,必要にせまられて学生の頃国語の教科書に載っていた『モモ』(ミヒャエル・エンデ作,大島かおり訳,岩波少年文庫)を手に取ると,そこには思いがけず立ち止まって考えることの大切さや,毎日にただ流されていくことの怖さにハッと気づかせてくれる物語が広がっていた。

 物語の主人公モモは,どこの誰ともわからない小さな女の子。ある日突然街にあらわれ,街の人たちに住みかを修理してもらったりご飯を分けてもらったりしながら廃墟に住み着いて暮らしている。モモは街の人たちにとって大切な存在になった。モモが,だまって話を聞くと,喧嘩をしていた人も,悩んでいた人も,自分自身と向き合って,自分の意志に気づくことができるのだ。モモが特別なことをするわけではない。モモは、ただだまって聞くだけ。物語の街は,そんなモモを受け入れて,モモの大切さに気づくことができる街だった。 

 そんな街が,人間から時間を盗もうと企む「灰色の男たち」によって,規律だらけで窮屈でせかせかした世界に変わってしまう。――もしもちゃんとしたくらしができてたら,いまとはぜんぜんちがう人間になっていたろうになぁ―― そんな大人たちの心は,「灰色の男たち」に付け込まれ,「良い暮らし」のためと信じて必死に時間を節約する毎日に追われていく。大人たちは,時間を節約することばかり考えて,時間を無駄にすることがとんでもない罪となり,イライラしたり互いを責めてばかりで,モモのことをすっかり忘れてしまった。

  子どもたちも,「灰色の男たち」に支配されてしまった。

  子どもたちはモモと一緒に、いつも新しい遊びを考え出して遊んでいた。子どもたちにとってはモモが心の中心人物で,モモがいなくても、モモがいるかのように遊ぶと、段ボールが海賊船になったり,石ころが宝物になって、イメージがどんどん広がり楽しい遊びを工夫できた。

 「灰色の男たち」は子どもたちを支配するのにとても手を焼いたが、大人たちを使って子どもたちの心を支配することにした。大人が時間を無駄にしないために、将来時間をたくさん節約できる大人に育てるために、と大人をそそのかした。子どもたちは決まった場所に放り込まれ、大人に教えられた決められた遊びしかできなくなってしまう。そのうちに、子どもたちは、楽しいと思うこと夢中になることを忘れて、大人たちと同じ顔つきの「小さな時間節約家」になってしまう。子どもたちは、最後には自分たちの好きなようにしていいといわれると、こんど何をしたら良いか全然わからなくなってしまうのだ。そしてモモとも遊べなくなってしまった。

 訳者の大島さんは、モモは「自然のままの人間」のシンボルのような子だと述べている。別の言い方をすれば、モモはありのままの自分のシンボル、とも言えるのではないかと思う。そう考えると、モモを大切にする=ありのままの自分を大切にする、ことによって、自分自身の気持ちに耳を傾ける余裕が生まれたり、落ち着いた気持ちを取り戻せたり、本当にしたいことに気づけたり、楽しむ力が湧いてきたりするところが、とてもしっくりくる。

 モモがどんな風に「灰色の男たち」から時間と元通りの街を取り戻したのかは、まだ読んでいない人のために取っておくけれど,物語の中では,「灰色の男たち」に立ち向かうために、過去・現在・未来のそれぞれの大切さに気づくことや、友だちとつながっている感覚を実感すること、心地よい音楽や香りを体験すること、成長するために深く眠ることなどが、とても重要な意味をもっている。

 これら一つ一つが、様々な心理療法の中で心身の回復や支援のために重要と考えられていることとリンクすることが,とても興味深いことだった。私たちの心にも「灰色の男たち」が深く入り込んでいるように感じる。そういう意味では,心理療法が「灰色の男たち」に立ち向かい,モモを大切にする心のゆとりを取り戻す役に立つことがあるともいえる。

  読み終えて,大切なもののために,自分のために,自由に時間を使う心地よい感覚を思い出せたように感じた。忙しい日々だけど,ちょっと立ち止まって考えることも大切にしたいなぁと,あらためて反省反省。次の休日は,ゆっくり時間をつかうことにし~よう♪

2014.07.23 カウンセリング
カウンセリングの窓から~性暴力被害への理解と対応を

西 順子

 女性ライフサイクル研究所では1990年の開設当初より、「子どもへの性被害/性虐待」の問題に取り組んできました。子どもへの性的虐待防止教育の実践、意識啓発活動に始まり、性的被害の関西コミュニティ調査、グループセラピーなど新たな手法も試みてきました。こうしたプロセスを経て、私自身はこの10数年、トラウマ臨床に力を注ぎ、個人カウンセリングを通して回復支援に携わってきました。 

 トラウマ臨床は日進月歩と言われますが、カウンセリングに来談くださった方のお役にたてるよう、新しい情報に目を向けるよう努めています。どうすればトラウマとなった出来事が過去のこととなり、「今」を生きるお手伝いができるのか、心と身体の健康を回復していけるのか・・と、様々な心理療法を学ぶなかで、EMDRやソマティック・エクスペリエンス(SE)というトラウマ療法との出会いもありました。トレーニングを通してトラウマと身体について理解を深め(今も現在進行形)、身体の叡智(=生体に備わる自然治癒力)を知るなかで、その学びと経験を臨床に役立て、回復への道案内ができればと願って取り組んでいます。生命には、回復力、自然治癒力が備わっていることを尊いことと思います。

 一方で、社会の中で性暴力被害が後を絶たないことには痛みを感じます。女性ライフサイクル研究所でのカウンセリングは、性暴力被害の長期的影響(子ども時代のトラウマ)へのご相談を受けることが多いですが、病院臨床では性暴力被害直後あるいは性暴力が発覚した後の短期的影響について、特に子どもやご家族のご相談を受けることが多いです。子どもへの性暴力が社会問題として認知された今も、子どもへの性暴力/性虐待が後を絶たないことには胸が痛みます。

 コミュニティ心理学の予防の概念によると、第一次予防は「発生予防」、第二次予防は「早期発見と早期対処、危機介入」、第三次予防は「回復への支援と再発予防」となります。近年、性暴力被害者支援センターが各地で立ち上がっていますが、公衆衛生の問題として、第一次予から第三次予防まで、予防の観点から更なる支援体制の充実が求められます。

 まず私が臨床で関わっているのは第二次予防、第三次予防ですが、子どものトラウマ臨床においては、さまざまな工夫が必要だと実感しています。子どもは性暴力被害の影響を言葉で表すことは難しく、行動上の問題や身体症状として現れることが多くなります。特にトラウマの回避反応、解離症状は表面的には見えにくいため、アセスメントが必要です。
 子どもに「どうやって、しのいでいるの?」と対処を尋ねると、様々な対処戦略を使ってしのいでいることがわかります。しかし、回避や解離(トラウマとなった出来事を切り離すこと)は一時的には役立ちますが、解離された「恐怖」が残ってしまう等、メンタルヘルスに長期的な影響を与えます。恐怖を少しずつ消化・解放しながら、生活全般が安定し落ち着いた後に、トラウマ記憶に焦点をあて、トラウマの中核にある恐怖を消化しておくことが必要と考えています。

 被害直後のケアから、中・長期的な影響のケアまで、子どもや家族に対して、医療、心理、司法、教育、福祉・・など多層的な支援が必要です。これからもトラウマ臨床に携わりながら、第一次予防から第三次予防まで性暴力被害者への支援体制が整うことを願い、被害者支援機関・支援者との連携、協働、ネットワークづくりに努めていければと思っています。

 なお、下記に性暴力被害にあった直後に見られる反応とご家族や周囲で支える方に求められる対応についてまとめました。早期発見と早期対応の参考にして頂ければと思います。

※社会資源の一つとして、被害者支援ポータルサイト(立命館大学法心理・司法臨床センター)も紹介させていただきます。⇒ http://www.lawpsych.org/higai

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■被害直後に起こりやすい反応

直後のショックが落ち着いたあとも、しばらく不安定な時期があります。一ヶ月後くらいまで、次のような症状がみられることもあります。疲労や苦痛がひどい時、長引く時には、専門機関に相談しましょう。

自分の気持ちがひどく動揺し、混乱していると感じる。
□精神的にとても不安定だと感じる
□抑えられないような怒りや悲しみを感じる
□気分の浮き沈みが激しく、落ち着かない

心や身体が麻痺してしまう
□事件の時や前後の記憶がない
□事件の時に身体が凍りついたような感じがした
□事件が他人事のような感じがする

事件に関することが頭によみがえってくる
□考えたくないのに頭に浮かぶ
□事件の夢を見る
□事件を思い出させるようなものを避けるようになる

落ち着かない
□夜寝つけない、眠りが浅い、途中で眼を覚ます
□イライラして落ち着かない
□集中力がなく、テレビが見れない、本が読めない
□いつも警戒してビクビクする、物音に敏感になる

■回復のために

被害後に、身体と心に起こる変化を理解して、回復のために必要なケアをしてあげましょう。あなたのペースで、できることからはじめましょう。

からだと心を休め、いたわりましょう。
□十分な休息をとりましょう。
□十分な睡眠と、健康的な食事をとりましょう。
□リラックスできることをしましょう。
 (呼吸法、瞑想、気持ちが落ち着く音楽を聴く等)

自分の生活を取り戻しましょう。
□マイペースを心がけましょう。
□いつもの日課を維持するようにしましょう。
□適度な運動をしましょう。
□気分転換をしましょう(趣味、読書など)。
□日記をつけましょう。

助けを求めましょう。
□信頼できる人に、体験や気持ちを話して支えてもらいましょう。
□信頼できる人に、そばにいてもらいましょう。
□あなたが必要としていることを伝えましょう。

■ご家族や周囲の方へ
 自分の大切な家族や友人が被害にあうと、周りの人も動揺してしまい、どうしてあげたらよいかと途方に暮れてしまうことでしょう。あなたの大切な人を支えるために、できることがあります。多くの人は、自分のことを大切に思ってくれる人とのつながりに支えられて、回復していきます。

安全が第一です。安全な場所で安心して過ごせるように、できることを考えてみましょう。
□傍にいて、一緒に時間を過ごしましょう。
□日常生活の援助や外出する時の付添など、相手への関心、配慮、思いやりを示しましょう。

話をじっくりと聞きましょう。
□無理に聞き出すことは禁物です。
□気持ちや反応を認めましょう。批判したり、自分の考えを押しつけてはいけません。
□自分を責めている場合には、「あなたは何も悪くない」と話すことも役に立ちます。

そして、ご自分もいたわり、セルフケアにも心を配りましょう。

●女性ライフサイクル研究所では、性暴力被害についてのご相談を受けています。
 カウンセリングのページも合わせてご覧ください。

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[参考文献]
村本邦子(2004)「性被害の実態調査から見た臨床的コミュニティ介入への提言」心理臨床学研究  vol22、No.1
村本邦子、西順子、前村よう子(2005)『子ども虐待の防止力を育てる』三学出版。
パトナム,F W(2011)「性虐待を受けた子どものアセスメントと治療」フランクパトナム来日講演資     料、フランクパトナム招聘委員会。

2014.05.28 トラウマ
女性のトラウマとライフサイクルの危機~映画『8月の家族たち』を観て考えたこと

西 順子

 「女性が人生(ライフサイクル)で出会う問題について、私たちも共に生きながら考える」、女性ライフサイクル研究所が1990年開設以来、志してきた援助の基本姿勢である。つまり、母娘関係、パートナーとの関係、子育て、暴力被害・・など、女性が人生で出会う問題は他人事ではなく、同じ土壌を生きている「私たち」にとって地続きにある問題であり、普遍的な問題であるとして取り組んできた。それは、女性を対象として見るのではなく、同じ立ち位置に身を置いて、女性の視点に立って感じてみる、ということでもある。

  この春、たまたま映画『8月の家族たち』の取材を受けさせて頂いた。この映画に登場するある家族の三世代の母と娘、それぞれが女性のライフサイクルの段階に応じた危機を経験していた。第一世代の母は老年期の危機、第二世代の娘は中年期の危機、第三世代の孫にあたる娘は思春期の危機にいる。取材では、中年期の視点からコメントさせて頂いたが、ここでは老年期の母親のことについて少し考えてみたい。というのも、メリル・ストリープが演じる母バイオレットの人生を振り返ってみたとき、それは同じ女性として、とても悲しい物語だから。私は痛みを感じ、見過ごすことはできない、いや見過ごしたくはないと思った。

 表面的には毒舌家であり薬物依存症の母であるが、それは女性のトラウマの苦悩と孤立無援感の表現とも考えられた。トラウマを抱えながら自分の生きづらさがどこから来るのかわからず、苦悩の人生を生きたであろう前世代の女性たちのことに思いを馳せた。自分の傷つきを回避して、自分にケアが必要なことに気が付かなければ、前世代のトラウマは次世代へと伝達されていく。次世代が負の遺産をどう正の遺産に変えていけるかは次世代の課題、テーマであるだろうが、前世代は老年期の段階においては、何ができるのであろうか。トラウマから自由になる可能性はあるだろうか。

  以前、「心理的ケアの喪失による女性の人生の危機」(『女性ライフサイクル研究13号』より)について考えたことがあるが、女性の人生の危機は心理的ケアの喪失と関わっていること、女性が人生の危機を乗り越えるためには、その喪失を受け入れて自己をケアしなおしていくことが必要であるとまとめた。そのためには、自分のなかにある渇望(「内なる少女」と言われる他者の愛情・ケアを求める欲求)に耳を傾けて、他者からのケアを受け入れることが必要であるとした。トラウマと回復の観点から言えば、喪失を悼む喪の作業と癒しと希望が必要といえるだろう。

  「家族の物語を紡ぐ~次世代に受け継ぐために」(女性ライフサイクル研究18』より)では、ある家族、中年期の姉妹三名と母親へのインタビューとグループワークを行った。家族が「否認」してきたことと向き合い、それぞれの経験に耳を傾け共有するなかで、互いへの感謝が生まれている。それぞれの体験を持ち寄り家族の歴史を紡ぐ作業であったと言える。老年期にいる母親にとって、子ども時代からの自分の人生を語るという体験は初めてとのことで、一生懸命思い出しながら語ってくれたことが印象に残っている。

  女性ライフサイクル研究所のカウンセリングでは、中年期、青年期の女性から、思春期、学童期・幼児期の子どもまで、ライフサイクルの発達と危機を乗り越えていけるようお手伝いしているが、老年期の女性との出会いもある。老年期は「統合性 対 絶望」の発達の危機にある。統合とは全体性でもあり、自分の生涯を意味あるものとしてまとめ、人生を受け入れることである。トラウマを生き抜いてきた前世代の女性の人生に敬意を表しながら、人生の物語を紡いでいくお手伝いをさせて頂くことができたなら第二世代としても幸いである

2013.10.10 カウンセリング
安全な場所を創る

西 順子

 カウンセリングのなかで、セルフコントロール技法として「安全な場所のイメージを創造する」というイメージを使った方法をよく使う。「その場所にいけば・・安全で穏やかに感じられる場所のイメージを思い描いてください・・」で始まり、イメージと五感で感じながら、トントントン・・とバタフライハグというタッピングをする(EMDR技法の一つ)。想像していただくその安全な場所のイメージは、お一人お一人にとって意味深い、大切なもの。かけがえのないもの。私も一緒にイメージさせて頂きながら、その方のイメージを大切にして、それを十分味わって頂けるようお手伝いしている。

 この技法はイメージだけでも有効だか、絵に描くとさらに癒しをもたらしエンパワーしてくれるものとなる。大阪本社にて月一回全五回で「女性ためのセルフケアグループ」を開催しているが、そのうちの一回が「安全な場所のイメージを創る」というテーマ。安全な場所のイメージを絵に描いていただくものだが、絵に描いているうちにイメージが変化していくのもユニーク。イメージの世界ならいつでもどこでも行ける・・そして感じられるって、イメージの力は素晴らしいなと思う。絵を描いているとき、また絵を見せて頂くときも、その「場」が、とても温かく優しい空気で包まれるように感じられる。その「場」の空気感が私自身もとても好きである。

 さらにグループに参加くださった方々が、このグループの場を「居心地がよい場所」「居場所」と言ってくださる。そのように感じていただけることが本当にありがたく、やっててよかったと安堵感が広がる。またこれからも居場所としてあり続けられるよう、この場を大切にしていこうという思いを新たにする。
 
私がカウンセリングをしている大阪本社の部屋には窓があるが、残念ながら都会の一室のため外の景色は見えない。この窓から空が見えるといいのになぁ・・と思うが、ないものねだりをしても仕方がないので、いろいろと部屋の工夫している。絵や植物を飾ったり・・(結局は自分が気に入ったものになるが)。来談して下さる皆さまが、この部屋で落ち着いて心地よく過ごせるようにと願っているが、「この部屋にくると落ち着きます」「安全に感じる」・・と言っていただくことがある。そう思ってくださり有難いな・・と私自身もほっとする。理想的な部屋ではないが、それでも「心地よい」と来談して下さる皆さまに感謝して、よりよいセッションを提供できるように努力していければと思う。
 
「安全な場所を創る」テーマは私にとってライフワークの一つと言える。カウンセリング、グループと、これからもこの場所を大切に、来談して下さる皆様にとって、安全で、心地よく、居心地のよい場所の一つとなれるよう、これからもこの場を大切にしながら努力していきたい。

(2013年10月)

2013.05.10 トラウマ
環境とつながる~「今、ここ」にいること

西順子

 今年4月28日~5月3日まで、神戸で開催されたSE(Somatic Experiencing)トレーニングに参加させて頂いた。今回講師のHoskinson先生は、初級トレーニングから神経生理学的知識を教えて下さり、とても学び深かった。神経生理学的基礎を学ぶことで、私たちは「生きもの」であること、「生きている」ということを実感する。

 さて、今回最も印象深く残っているのは、「感覚をとおして環境とつながる」ことである。トラウマとは、「今ここに、いることを不可能にしてしまう」と言われる。なので、解離せずに「今、ここ」にいるためには、感覚を通して環境とつながれるよう、外界のものを意識したり、工夫したりすることが大切となる。特に、外界にある心地よいものとつながることが大切である。

 私自身もまた、外界の心地よいものとつながれる時間を意識したいと思っているが、まず最も心が惹かれるのは、自然である。日中は部屋の中なので、朝が一番自然と触れ合えることに気が付いた。お天気の日の朝の空を見上げるのは心地がよい。胸が拡がり、胸に空気が入る。そして心も広々と開放的な気持ちになる。公園を通ると木々の緑が美しい。最近、公園横の道を通ると、鳥の鳴き声がよく聞こえることに気づいた。鳥の鳴き声に注意を向けていると、さらによく聞こえるようになってくるから不思議だ。陽の光も明るくて、心地よい。そして、朝早くFLC本社に着くと、東側に玄関があるので、ちょうど陽の光が差し込んでいて、すがすがしい。朝少しでも早く起きると、こうして五感で心地よさを感じ、探索できる時間をもてると気づいた。

 本社の面接室のなかは、陽の光が差し込まないのは残念であるが、その代わりに様々な工夫をしている。ランプの温かいオレンジの光、観葉植物、そして絵をいくつか飾っている。好きなものを周りに置くことで私自身、居心地よく過ごすことができる。カウンセリングで来談くださった方々にも、「今、ここ」の場で、少しでも安全に感じて頂くことができればと願っているが、この部屋という環境のなかで、少しでも心地よいと思うものがあれば嬉しい。

 トラウマに圧倒されているとき、心地よいものとつながることは難しくもあるが、日頃から心地よいものと親しむようにすることでレジリエンス(回復力)を高めることができる。突然「引き金」を引いて過去の辛い記憶が出てきたとしても、辛さが少しでも緩和するように、外界に注意を向けることで「今、ここ」に戻ることも可能となる。

 そして環境とつながるために最も大切だと思うのは、安心できる人とのつながりである。人の顔を見て、話をしたり、聞いたり、笑ったり・・と、人がそこにいて、やりとりすることが、安心と信頼をもって環境につながることである。仕事の一つとして、NICU(新生児集中治療室)で赤ちゃんやお母さんと出会うが、赤ちゃんがお母さんに抱っこされるとぴったり泣き止んだり、じーっとお母さんを見る姿に、赤ちゃんはお母さんを通して、この世界(環境)がどんな世界であるかを感じているのだなということを実感している。

 心地よい感覚を探索することをもっと楽しめればいいなと思う。それは「今、ここ」に私は生きているんだという実感、生きる喜びともつながるものである。皆さんにとって、心地よい感覚の経験はどんなものでしょうか。心地よい感覚を探索してみませんか。

 

(2013年5月)

2011.12.10 性的虐待
子どもへの性的虐待を考える~臨床的援助と予防と

西 順子

 1992年、女性ライフサイクル研究所では年報2号で「チャイルド・セクシャル・アビューズ」を特集した。チャイルド・セクシュアル・アビューズとは、家庭内で起こるか家庭外で起こるかを問わず、子どもへの性的な虐待(力の濫用)を指している。当時はまだ、「それは病んだ国のことで、日本には性的虐待はない」と言われていた時代であった。

 しかし、子どもへの性的虐待は、私たち自身の問題であると認識し、社会的な働きかけを行ってきた。子どもをもつ母親として性被害から「子どもをどう守れるか」という問題と、性の対象とされてきた女性の問題としてである。

 年報2号は、各社新聞で取り上げられ、全国各地から、購読の注文が届き、あっという間に売り切れとなった。予防啓発活動として、子どもへの防止教育プログラムを開発して防止教育を実施したり、専門家への意識啓発として1990年代は、心理臨床学会で自主シンポジウムを開いたりしてきた。そして、時代は変化し、2000年には児童虐待防止が成立、子どもへの性的虐待も社会的に認知されるようになった。防止法から早10年過ぎたが、子どもの置かれている現実は変わったであろうか。

 子どもへの性的虐待はいまもなお起こっている。ただ、希望を感じるのは、性虐待を子どもが打ち明けたとき、母親がその声を否認せず、受けとめようとしていることである。親に話せないまま、被害の記憶を失っていたり、あるいは、親に話したとしても、否認され、否定されて受けとめてもらえなかったことで、トラウマ反応が大人になってから顕在化することも多いが、今、母親らがしっかりと子どもの現実と向きあおうとしている。

 日頃の臨床のなかで、子どもの性的虐待、性被害の問題と遭遇する。多くが、子どもへの性的虐待が発覚したとき、母親がどうしたらいいかと戸惑い相談に来られる。子どもが母親に被害を打ち明けてのことである。その声を受けとめた母親が、どうしたらよいのかと助言や子どもへのケアを求めている。加害者が顔見知りであることも多く、子どもも母親もその衝撃は大きい。安全感とともに、信頼感を壊される。加害者は子どもが信頼すべき大人の場合もあるし、子どもの場合もある。同じ家族、学校、地域コミュニティのなかで起こった被害に、被害にあった子どものケアはもちろんのこと、今後どう生活していけばよいのか、生活の問題や、人生の問題とも関わってくる。そのなかで、母親たちが、「子どもの安全を守る」のにどうすればよいかと、悩み、葛藤しながら、子どもをケアしようと懸命になっておられる姿を目の当たりにしてきた。

 カウンセリングでは、子どもとのプレイセラピーや面接のなかで、トラウマ反応を解放できるようにアプローチしているが、同時に母親への心理教育や母が子どもを支えるサポートを提供している。この20年のなかで、トラウマの解放に有効な様々なアプローチが我が国にも紹介されてきているので、トラウマによる心身への反応を緩和していくことが可能となった。もちろん、1人として同じ人はいないので、個々の回復の文脈に即して考えていかなければならない。回復の文脈をどうつくっていくかは、何よりも母親から学ばせて頂くことが多く、母親との協働作業となると言ってもよい。子どもが自分の自信を取り戻し、回復していくとき、そこには母親の並々ならぬ努力と支えがある。母親をエンパワメントしていくことが、子どもの回復の鍵になると実感している。子どもは安全の基地さえあれば、どんどん外へと世界を拡げていくからである。

 子どもが自分の強さ、自信をとり戻し、力強く回復する姿、そしてそれを支える母親の姿に心を打たれる。しかし、子どもが性的に濫用される現実が変わらなければと思う。

 日頃は臨床が仕事ではあるが、まだまだ予防啓発活動、社会への働きかけが必要なことを実感している。被害者はもちろん、加害者をつくらない社会のために、子どもの権利が尊重されるコミュニティでなければと思う。虐待とは、子どもの境界線の侵犯である。私たち誰もが、境界線を尊重される権利をもっている(境界線とは、自分の安全や人格やプライバシーを守るために、「私の体」「私の気持ち」「私は私」という感覚のこと)。まずは大人が子どもの身体的、性的、心理的境界線を尊重していかなければならないと思っている。 

 震災以後、Twitterを始めて、今社会のなかに、性暴力に取り組むさまざまな団体が立ちあがっていることを知った。私自身もまた、予防啓発として自分にできることからと、子どもを性的に濫用されることがなくなるよう、性的虐待は子ども達の身近で起こっていること、その問題意識を伝えていきたいと思う。

※参照: 子どもの性的虐待の予防、発見、ケアに関する文献
「チャイルド・セクシャル・アビューズとは何か」年報2号(1992)、村本著。
「チャイルド・セクシャル・アビューズを子どもの様子から知る指針」年報2号(1992)、村本著。
『子ども虐待の防止力を育てる~子どもの権利とエンパワメント』(2005)村本、西、前村著、三学出版。
『FLC子育てナビ3: 子どもが被害にあったとき』(2001)窪田、村本著、三学出版。

(2011年12月)

2011.05.12 カウンセリング
セルフケアのヒント~肯定的な感覚(リソース)を強める

西 順子

 新緑が美しい季節となりました。植物の生命力から、活き活きとした自然のエネルギーを感じます。一方で、連休明けのこの時期はわけもなく憂鬱になったり、焦ったり、疲れが出やすい時期でもあります。新しい環境や生活の変化に適応しようとして、一時的に強いストレス状態に陥っていると言えるでしょう。眠れない、食欲がない、頭痛や腹痛など、ストレス反応が身体に出る方もあるでしょう。強いストレスがかかると、ストレス反応が生じるのは「自然なこと」です。ストレスを何とか乗り越えようとして、心と身体が闘っているのです。ここでは、ストレス反応を和らげるためのセルフケアの一つとして、肯定的な感覚(リソース)を強める方法を紹介しましょう。

 肯定的な感覚にはどんなものがあるでしょうか。例えば、ハーブや花の匂いをかぐ、和ませる音楽や元気の出るエキサイティングな音楽を聴く、公園を散歩する、ペットと遊ぶ、熟した桃やオレンジの味を楽しむ、マッサージを受ける、美しい絵を観に美術館に行く・・等は、直接に感覚とつながり、自分を慰める行動です。

 皆さんは、どんな感覚の経験が好きですか? 視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚など、五感の感覚ごとに、心地よい経験を思い出し、それを行動に移してみましょう。心地いい感覚に意識を向けて、その感覚に留まってみましょう。その感覚を呼吸と一緒に吸いこむようにして感じてみるのも効果的です。実際に行動できないときは、想像力を使うこともできます。心地いい感覚の経験をイメージし、イメージの世界のなかで感じてみましょう。

 ストレスを感じ、心身にさまざまなストレス反応が出ているとき、肯定的な感覚の経験を意識的に取り入れることで、ストレス反応を緩和し、心身の状態を落ち着かせることができます。カウンセリングでは、自分自身のストレス反応について理解し、ストレス反応を緩和させるために身体感覚を用いた方法を使っています。関心のある方はカウンセラーにお尋ねください。
                             
                            (2011年5月発行:ニュースレター特集より)

2009.06.01 カウンセリング
「心」と「身体」をつなぐトラウマケア

西 順子


 ひとの「心」に関心をもち、「その人らしさを大切に、人生を歩むお手伝いができれば」と心理的援助に関わるようになり20年、カウンセリングに携わるようになって約10年がたちます。特に、心の傷つき(トラウマ)のケアに取り組んできましたが、近年、「身体」のもつ力に関心をもつようになりました。PTSD、パニック障害、うつ、心身症など、心身の健康の回復を望んで来談される方のニーズに応えられるようにと、効果があるとされる新しい方法を学ぶなかで、「心」と「身体」の結びつきについて再認識するようになったからです。最近、「身体」にはそもそも自然治癒力が備わっているのだ、という思いを強くしています。

 トラウマケアに効果が認められている方法には、認知行動療法、EMDRがありますが、フォーカシングや臨床動作法もトラウマケアに使われています。どの方法も、身体にアプローチする側面を含んでいます。
 今年、自然なアプローチ法を用いてトラウマ症状を解決する、新しいトラウマ療法が我が国にも導入されました。ソマティック・エクスペリエンス(身体経験)メソッドです。開発者である医学生物物理学博士・心理学博士ピーター・リヴァインは、「トラウマの癒しの鍵は、強烈な感情より、身体感覚にある」と言います。
 生命体は、脅威にさらされたときに、戦うか、逃げるか、そのどちらもできないときに、凍りつくか、の反応をします。これは生存のために自動的に起こる自然な反応ですが、「凍りつき」によって、PTSD症状のほか、さまざまな心身の症状、衝動的行動が起こります。リヴァインは、この「凍りつき」反応を解放していく方法を見出しました。「凍りつき」を解放していくことで、トラウマによって切り離された、「感覚・イメージ・情動・行動・意味」がつながるのです。
 この方法は、誰もに自然に備わっている「身体感覚への気づき」を使うということで、とても安全であり、エンパワメントの手法だと感じています。

 カウンセリングでは、来談された方のニーズや希望に応じて、従来の「言葉」による心理療法に加えて、「身体感覚」に働きかけるアプローチも取り入れています。「心」と「身体」とのつながりを取り戻すことで、「ありのままの存在」として自分を大切に感じ、生きることの意味を発見していけるものと、実感しています。関心のある方は、カウンセラーにおたずね下さい。

参考文献:
『心と身体をつなぐトラウマ・セラピー』ピーター・リヴァイン著、藤原千枝子訳、雲母書房
『PTSDとトラウマの心理療法~心身統合のアプローチの理論と実践』バベット・チャイルド著、久保隆司訳、創元社

                           (2009年6月発行ニュースレター特集より)

2007.07.01 カウンセリング
トラウマ反応とケア

西 順子

 女性ライフサイクル研究所では、設立以来、トラウマからの回復のための心理的援助に力を入れてきています。ここでは、トラウマとは何か、トラウマがもたらす心理的影響としてトラウマ反応についてお話したいと思います。

 〈トラウマとは〉一般的に、心身に不快をもたらす要因をストレスと呼んでいますが、ストレスが非常に強い心的な衝撃を与える場合には、その体験が過ぎ去った後も体験が記憶の中に残り、心理的な影響を与え続けることがあります。このようにしてもたらされた心理的な後遺症のことを、「トラウマ(心的外傷)」と言います。

 〈トラウマ反応〉トラウマが与える心理的な影響のことを、「トラウマ反応」と呼びます。トラウマ反応は、PTSD(心的外傷後ストレス障害)が代表的ですが、うつ、心身症としてもあらわれます。これらは、極度のストレスに対する人間の正常な反応の一つです。

 PTSDの主な症状は三つで、(1)侵入的症状、(2)回避症状、(3)過覚醒症状です。
(1)侵入症状とは、トラウマとなった記憶、イメージ、臭い、音、その感覚が、人々の生活の中に 「侵入」してくることです。フラッシュバックや悪夢など、侵入症状は極度の苦痛を引き起こします。
(2)回避症状とは、トラウマとなった記憶を思い出させる状況、人、出来事を避けることです。苦痛   を避けることで、親密な付き合いから引きこもったり、愛や喜びといった感情を経験することができなくなることもあります。
(3)過覚醒症状とは、トラウマ体験によって、世界への安全感、信頼感に亀裂が生じることによ      り、ビクビク緊張して常に警戒してしまうことによります。その結果、睡眠障害、集中困難となり、ビクビクして驚きやすくなります。

 トラウマとなるような出来事を経験すると、精神的に傷つきやすくなり恐怖感が残るため、自分はおかしくなってしまったのではないか、自分が弱いからだ・・と思ってしまう方もありますが、そうではありません。まずは、自然な反応であることを理解しましょう。

 カウンセリングでは、トラウマを受けた方が自分のトラウマ反応を理解し、症状をマネージメントし、心身のコントロールの感覚を回復していけるよう、お手伝いができればと思っています。

                                                  (2007年7月発行:ニュースレター特集より)

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