- 2014.12.01 コミュニケーション
- 夫って/妻ってこんなタイプ!!夫婦間ストレスを減らすコツ?!
福田ちか子
漫画家の高世えり子さんが,自分とは考え方やものごとへのアプローチが大きく違う夫に焦点をあてて,出会いから結婚,出産までを描いたエッセイコミック"理系クン"シリーズ。 "理系クン"と呼ばれる夫、N島クンが,夫婦間の葛藤や家事といった彼にとっての難題を冷静に分析して改良(?)していく様子や,そんなN島クンに対する妻、高世さんの心のツッコミが,大学時代に比較文化を学んでいたという高世さんによってコミカルに描かれていて面白い。
例えば,買い物の仕方の違いで勃発した夫婦ゲンカについて。結婚後の新居に購入する家具を買おうとしたとき,納得がいくまで素材や商品を比較検討したいN島クンと,N島クンと一緒にお買いものをする雰囲気を楽しみたい(買う品物へのこだわりは小さい)高世さんの間に大きな溝ができる。
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高世さん:「二人で買い物しようって言ったのに,N島クン一人で勝手にいっちゃうわ,私の意見は聞かないわ,話しかけてもシカトするわで一緒にいる意味全然ない!!」
N島クン:「(まっさお)......僕......は...えり子にとっても今日一日は楽しくてもりあがったデートだと思ってた...」
高世さん:「どっ,どこが......?」
N島クン:「え...だって...一緒にいるし,一緒にお店に入ったし...(以上)」―(略)―
N島クン:「シカト!?」「いつ...!?」 高世さん:「ずっと!」「休もうよ~とか」
ここまではよく起こるすれ違いかもしれない。しかしここから,N島クンの分析がはじまる。
N島クン:「ごめんそれは僕の頭のCPUが「買い物」という項目で占められていて,えり子の様子や外のコトはひとっつも入ってこなかったんだよ...」「しかしえり子はすごいね...「会話」と「買い物」を「同時に処理」できるんだ...
そうして出た結論が,
N島クン:「はっ,そうかっ―(略)―集中力の使い方がちがう方式なんだよ!」
この後,お互いが重視するポイントを比較検討して,N島クンがネットで商品を探してしぼりこんでから高世さんに聞くシステムを考え出し,一件落着となる。
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こんな風に高世さんからみたN島クンとの価値観の違いにまつわるエピソードがちりばめられている。 "二人でしゃべりながら、良い雰囲気になったら楽しいだろうなぁ"などという期待に対して,N島クンからあまりにもピントがズレたコメントが返ってきた時の高世さんの肩をポンと叩いて労いたくなることもしばしばだ。
ただ、このシリーズの面白いところは,二人の価値観が違う!!というところでどちらかがあきらめることや,相手の価値観を変えさせようとすることなく,お互いの価値観が尊重される落としどころをみつけていっているところだと思う。
相手の価値観やタイプをしり,どちらか一方が我慢するのではなく,自分も相手も大切にする。高世さんやN島クンのように,衝突や葛藤があったとき,お互いの価値観の違いに気づいて、そのことを相手と共有できると,お互いにとって程よい着地点を工夫できて、「もうっ!!なんでっ!!」というストレスが,少~し減らせるかもしれない。
引用文献: 高世えり子 2012 理系クン 夫婦できるかな? 文芸春秋