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FLCスタッフエッセイ

2007.01.10 こころとからだ
身体感覚との対話

 西 順子

 カウンセリングに来談された方から、「こんなに自分と向き合ったことはなかった」と、聞くことがある。確かに、カウンセリングのなかでクライエントさんは自分自身の心の内側と向き合い、心の内との対話がすすむなかで、自分で答えを見つけられていく。人に自然に備わっている力や可能性、そしてまた、人間の力を超えた力の働きに、敬虔な気持ちになる。カウンセラーとして、その答えを見つけるために、よりよいお手伝いができればと思っているが、そのプロセスの途中では、何らかの壁にぶつかることもある。
そんなとき、そのプロセスをすすめるための一つとして、身体感覚と向き合うことが役に立つと感じ、最近では身体感覚を取り入れたアプローチも取り入れている。特に、トラウマ(心的外傷)は身体に記憶されると言われることから、身体感覚に注目するようになってきた。

  そもそも東洋では、心と体は一つのものとして捉えられてきたが、日本語でも、心を身体感覚で表現する言葉が多い。怒りは、「腹が立つ」「腹に据えかねる」「はらわたが煮えくりかえる」「頭にくる」「頭に血が上る」、笑いは「お腹をかかえて笑う」「笑い転げる」、感情が込み上げてきたときは「目頭が熱くなる」「胸がいっぱいになる」、苦しい時は「胸が詰まる」「喉か詰まる」、心の負担感やプレッシャーは、「重い」「軽い」・・など。ほかにも、「ムカつく」「スッとする」「ワクワクする」なども身体感覚の表現である。
  自分の本当の気持ちがわからないとき、どうしていいかわからないとき、心の内側に問いかけても答えが見えないとき、自分の体の感覚に耳を傾けてみることで、自分の気持ちに気づくことができる。私も、心が「もやもや」っとするとき(もやもや・・は胸の辺りの身体感覚)、もやもやってなんだろう・・と「もやもや」に聴く気持ちでいると、ふと「ああ、そうか」と気づきが起こることがある。意識できない気持ちも、無意識から身体感覚を通して教えてくれる。

  先日、10年ぶり?くらいに、フォーカシングを学びなおそうと思ってワークショップに出かけた。フォーカシングとは、「からだを使って、自己の気づきを促し、こころを癒していく、独特のプロセス」(アン・ワイザー・コーネル)である。「からだの気づきに対して興味深い好奇心をもって注意を向けるとき、洞察、身体的な解放、前向きの生活の変化があらわれる」と言う。
  私自身も日々の生活の中で、こまめに体の感覚に耳を傾けているが(まずは、今日は何が食べたい?とお腹にきくことにはじまり・・!)、自分はどう思うのか、どう感じるのかを大切にしたいと思っている。

(2007年1月)

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