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FLCスタッフエッセイ

2015.07.06 DV
DVを受けている女性を支える~家族、友人、知人として

                                                                           
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 あなたが大切にしている人(家族や親戚、友人、同僚)から、パートナーや恋人との関係で悩んでいる、暴力を受けていると打ち明けられたことはありませんか。
 彼女のことを心配しながらも、なんと言葉をかけていいか、どう対応していいかと戸惑ったかもしれません。あるいは、彼女の力になりたいと協力を申し出たけど、断られてしまい無力に感じたかもしれません。

 パートナーや恋人など親密な関係にある人から受ける暴力のことをDV(ドメスティック・バイオレンス)と言います。調査によれば、女性の約4人に1人は配偶者から被害を受けたことがあり約10人に1人は何度も受けています。被害にあった女性の約4割はどこにも相談していませんが、相談したことがある人は「家族・親戚」「友達・知人」が最も多く(合せて5割)、DVに関わる専門機関や支援機関に相談する割合はほんのわずかです。
 交際相手からは(いわゆる「デートDV」)、女性の約5人に1人が被害を受けたことがあり、被害を受けた約4人に1人は命の危険を感じたことがあります。被害を相談したことがある女性は約6割で、相談先のうち「友人・知人」が約5割となっています。
                        (内閣府2015年発表:男女間の暴力に関する調査より)


 この調査結果から、DVを受けている女性が悩みを話したり、相談するのは、まず身近にいる家族や友人、知人です。女性が暴力から逃れ、回復していくためには、被害女性の身近にいる家族や友人、知人の存在が重要です。なぜなら家族や友達など身近な人との「情緒的なつながり」こそが、被害女性が信頼感や自尊心を取り戻す力になり得るからです。
 ではどのようにして「情緒的なつながり」を保てばいいのでしょうか。『DV被害女性を支える』(金剛出版)をもとに、被害女性との「関わり方」の指針を紹介できればと思います。

□アンカーの必要性

 『DV被害女性を支える』の著者、ブルースターさんは、被害女性の家族、友人らが果たす役割をアンカー(錨:いかり)という言葉で表現しました。
 ブルースターさんは心理療法家としてDV被害女性や家族と関わり、シェルターで臨床主任を務めたこともある方ですが、昔にボーイフレンドからの暴力の経験があります。「そのときは幸いに周囲に心温かい人がいてくれ、いれかわりたちかわりアンカー(錨)として働いてくれたおかげで今があり、もし、いなかったら自分の人生はかなり違った方向に進んでいただろう」と言います。

 アンカーとは船の錨(いかり)のことで、アンカーの仕事は船の安定を保つことです。鎖がたるみすぎてもいけないし鎖を断ち切ってしまうこともありません。いつも鎖をピンと張って船を近くにおくことで、船の方も自分のいるべき位置がわかります。
 DV被害女性を支えることも同じで、アンカー(錨)の役割を果たす「人」が必要だと言います。第三者であるアンカーとのつながりが保てることで、DV被害女性はよりよい解決に向かうチャンスができます。アンカーとの平和な関係のもとで、女性も自分本来の強さに目覚め、自己を取り戻す力を得られるのです。

 しかし、DVを受けている女性との関係で、家族や友人が知らず知らずに演じている典型的な役が二つあり、それを「逃亡者」と「救助隊」と言います。逃亡者タイプの人は被害女性と気持ちの上で離れる傾向にあります。救助隊タイプの人は巻き込まれ過ぎる傾向があります。この中間になるのがアンカーで、アンカーは大切な人との物理的な距離を保ちながら、相手に敬意を持ち、支えとなる接し方をします。
 アンカーとは、相手が本来持っている能力を支援し、力づけ、伸ばしていく人のことです。その女性が自分の長所や感情や欲求に目が向けられるよう助け、自力で最も安全な判断ができるよう手伝う人です。

□DVを受けている女性を支援するにあたっての原則

 女性を支援しようとするときの原則は、エンパワメントと「つながり」です。あなたが女性のことを大切に思い、いくら善意であったとしても、エンパワメントの原則がないと支援はうまくいきません。エンパワメントとは、人は本来生まれながらにして、生き抜く「力」が備わっていると信じることからスタートします。そして、相手を変えようとしないことが重要です。女性を変えようとすると、あなたは支配する立場になり、彼女の力を奪い孤立させてしまいます。アンカーとして集中しなくてはならないのは、大切に思う女性と信頼関係が持てる人になることです。信頼は、心が通じ合うかどうかにかかっています。

 DVの話をうちあけられたときの原則を、ブルータスさんは12カ条としてまとめています。

1. 信じること
2. 彼女が虐待されている事実を真剣に受け止めること
3. 中立を守り、片方に味方しないこと
4. 彼女の判断を尊重し、批評しないこと
5. 彼女の気持ちを尊重すること
6. アドバイスはしないこと
7. 彼女ではなく、あなた自身をコントロールすること
8. あなたのとらえた現実を彼女に見せること
9. 共感を心がけながら、客観性を保つこと
10. あなた自身の欲求を満たして、手本を見せること
11. あなたにできることとできないことを伝えること
12. 援助を申し出るときに条件をつけないこと(見返りを期待しないこと)

                「DV被害女性を支援するにあたっての12カ条」『DV被害女性を支える』より


 DVを受けている女性を支え、支援したいと思っているけど、どう関わればよいかという声を家族・親族だけでなく、地域で活動している支援者の方からもお聞することがあります。そこで、その思いが、うまく女性とつながることができればと思い、「アンカー」について紹介しました。DV被害女性に「アンカー」という存在があればどんなに安心できることだろうかと思います。
 もちろん、DV被害者支援は一人ではできるものではありませんので、危機介入や緊急事態にはDV専門機関につないで、援助やアドバイスを受けることが必要な場合もあるでしょう。また自分自身の身を守ること、セルフケアも大切にしていただきたいと思います。

 DVを受けている女性が、身近にいる他者との間に〈信頼の絆〉が結ばれていくことを祈っています。

 なお、DVを受けている女性の支援について学ぶ講座を企画しました。家族として友人として知人として、隣人として何ができるかを共に学び、共有する機会を提供できればと思います。詳しくはこちらをご覧ください→「講座:DV被害女性を支える~家族、友人、知人として」

参考文献:『DV被害女性を支える~信頼感と自尊心をつなぎとめるために』スーザン・ブルースター著、平川(監修・解説)、和歌山(訳)、金剛出版。


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