- 2026.01.21 カウンセリング
- 母娘の距離感、変化する?
少し暖かい日が続いてたかと思うと、また寒気がやってきました。外は空気が冷たく寒さが身に沁みますが、部屋にいると窓辺から注ぐ日の光に癒されるような気持ちになります。
さて、ホームページ「インフォメーション」コーナーに、昨年のメディア掲載記事がアップされました。昨年11月、雑誌AERAの女性記者様より「母娘の距離感 」について取材のご依頼があり、コメントさせていただいたものです。母との距離感は変化する? という頂いたテーマについて、久しぶりに「母娘」を切り口に思い巡らす機会になりました。今日はそのことを少し言葉にしてみたいと思います。
取材では限られた時間とスペースのなか、私にできる範囲で「母との距離感の変化」を一つの視点(発達心理学やライフサイクル論)からお話しさせていただきました。取材のあと雑誌が届き、記事全体を読ませていただきましたが、そこには読者である女性から寄せられた娘としての体験、心の移り変わり、心の声が紹介されていました。お一人おひとり、そこには大切な物語がありました。
女性のカウンセリングでは、娘として心の傷つき(子ども時代の愛着の傷つき)とその癒しがテーマになることが多いものです。母娘のテーマは普遍的なテーマ、永遠のテーマであるでしょう。
娘が成長し、思春期を経て一人の女性として人生を歩むとき、子ども時代の母との関係性に変化が起こるのは自然なこと。自ずと距離感に変化も生まれます。ちょうどよい「心地よい距離感」「ほどよい距離感」は「安全」であることが前提です。娘は自分の安全を守りながら「心地よい距離感」を模索していくといえるでしょう。
娘としての心の傷つきには、虐待だけではなく「認めてもらえない」「関心を向けてもらえない」「辛いときに助けてもらえない」など母から「見捨てられた」と感じる体験があります。
子どもには「認めてほしい」「受け入れてほしい」そして「安心させてほしい」というニーズがあるため、母の期待になんとか応えようと子どもは頑張ろうとするものです。しかし大人になって人生のある段階で、また人間関係の中で、心の奥にしまってきた苦しみ、悲しみ、怒り、寂しさ・・が浮上するということが起こります。母に対する複雑な感情が葛藤しあうことも起こりえます。それは苦しくもありますが、より自分らしく生きたい娘の心のニーズから生じてくるといえるでしょう。
そんなとき母と物理的な距離を置くことで心理的な距離を保ち、自分自身の回復と癒し、つまりは自分のためにエネルギーを注ぐことが必要になることもあるでしょう。母のケア役割を降り、距離を置くことで自分を守ることは、娘にとって自分の人生を生きる第一歩となるものです。
心の変化を象徴する、ある物語を紹介したいと思います。ギリシャ神話のデーメテール(母の女神)とペルセポネー(娘の女神)の母娘の物語では、子ども時代のあと母娘に別れが訪れます(人間でいえば思春期でしょうか)。神話では娘は闇の世界に囚われるのですが、娘が変化成長した後に母との再会を果たします。その後、娘は母と自分の世界とを行ったりきたりするようになるのです。
娘が母の元に戻る、つまり再会が可能になったのには母の変化もあります。母デーメテールにとって娘との再会は、母が自分の喪失を受け入れ悲しみを乗り越え、心理的に成長を果たした後に訪ずれているのです。(→参照『女はみんな女神』)
娘も母もそれぞれが変化成長した後に再会する、つまり互いにちょうどよい「心地よい距離感」でいられる、この物語は理想的かもしれません。しかし娘も母も心理的に成長するという潜在力をもっています。
母親もまたかつて娘であったわけです。母もまた娘としての傷つきを癒し自分を大切にすることで、世代間連鎖にストップをかけ、次世代を生きる娘に希望を伝えていけるのではないか・・と信じたいと思っています。
またたとえ現実の母が変わらなかったとしても、娘自身が愛着のニーズ「ありのままを認められたい」を認め、温かく受け入れることができれば癒しは可能であると信じ、願っています。
ちなみに、私自身の母との距離感も、子ども時代→思春期→成人期→母の介護の時期→母の死、とライフサイクルと共に変化してきました。母が亡くなって2年。今想像していなかった想いに気づかされています。今はもう会えない寂しさが、時折ふとしたきっかけで出てくることがあるのです。私のなかにある「子どものパーツ」、子ども時は甘えられなかったパーツが、今懐かしく会いたがっているのでしょう。私自身、この感情に気づいたときには寄り添いながら、この変化のプロセスを大切にしていきたいと思っています。
下記に今回のメディア記事、過去に書いたエッセイをリンクします。母と娘の関係性、その距離感に関心がある方、悩んでいる方、整理したい方は、こちらも併せてお読みいただければと思います。自分らしく生きやすくなる何某かのヒントとしてお役にたてれば嬉しいです。
最後になりましたが、こうして改めて「母娘の距離感」について考える機会を与えてくださり、とても丁寧に話を聞いてくださった記者さんに心よりお礼申し上げます。女性にエールを送りたい、女性記者さんたちの思いが、女性たちに届きますように・・と願っています。
【メディア掲載】AERA2025年11月17日号「女性×働く シリーズ14 母との距離感」
【エッセイ】2015年「カウンセリングの窓から~母娘の心理と癒し〈娘編〉」西順子
【エッセイ】2015年「カウンセリングの窓から~思春期の娘と母 〈母編〉」西順子
寒いなか、シクラメンも頑張っています![]()





