IFS(内的家族システム)療法
IFS(内的家族システム)の基本概念
内的家族システム療法(Internal Family Systems Therapy)は、家族療法家 リチャード・C・シュワルツ によって開発された心理療法モデルです。
1. 私たちの心は「一つの家族」のようなもの(心の多重性)
IFS療法の最大の特徴は、私たちの心を単一の塊ではなく、多くの「パーツ(部分)」が集まった一つの「システム(家族)」として捉える点にあります 。 「自分を厳しく批判する声」や「過食や依存で気を紛らわせようとする衝動」、あるいは「深く傷ついた子どものような感情」など、私たちは日々、心の中で異なる声が対立するのを経験しています 。これは異常なことではなく、人間の自然な心のあり方です 。
2. 「悪いパーツ」は存在しない(非病理化の視点)
IFSでは、どんなに破壊的に見える行動(自傷、依存、過度な批判など)であっても、それはそのパーツが「あなたを守るために」引き受けてくれた極端な役割であると考えます 。
3つの役割:あなたを守るためのチーム
私たちの心の中には、大きく分けて3つの役割を持つパーツたちが存在し、あなたを守るために活動しています
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エグザイル(追放されたパーツ): 過去に負った深い傷や悲しみ、無力感という「重荷」を一人で背負っている、とても繊細で幼いパーツです。あまりに痛みが強いため、普段は心の奥に閉じ込められています。
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管理者(マネージャー): あなたが日常生活を問題なく送り、二度と傷つかないように、常に周囲を警戒し、自分をコントロールしようとする「守り手」です。批判や完璧主義という形で現れることもあります。
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消防士(緊急出動隊): エグザイルの痛みが溢れ出しそうになったとき、その火を消し止めるために緊急出動する「守り手」です。衝動的な行動(過食、怒り、依存など)で、一時的に痛みを麻痺させたり、注意をそらしたりします。
3. 本来のあなた「セルフ(Self)」の力
どんなに混乱した状況でも、私たちの中心には傷つくことのない「セルフ(Self)」という本質的なリーダーシップが存在します 。 誰にでも、生まれながらにして備わっている知恵と思いやりの源泉です。
セルフは、「8つのC(The 8 C's of Self-Leadership)」と呼ばれる8つの資質によって特徴づけられます。(Curiosity)、思いやり(Compassion)、落ち着き(Calm)、自信・信頼(Confidence)明晰さ(Clarity)、創造性(Creativity)、勇気(Courage)、つながり(Connectedness)といった本質的な輝きです。
セルフはパーツたちが「一歩引いて(Unblending)」スペースを開けてくれることで、自然に現れます 。セラピーの目的は、この「セルフ」が内なる家族のリーダーとなり、パーツたちを癒し、調和をもたらす「安全な場」を作ることです 。
4. セラピーで目指すこと
IFSセラピーでは、困った行動をするパーツを排除したり変えようとしたりするのではなく、まずそのパーツが「あなたをどう守ろうとしてきたのか」という肯定的な意図を理解します。 セルフがパーツたちの良きリーダーとなり、エグザイルが背負っている重荷を下ろす手助けをすることで、心の中に本来の調和と安心感を取り戻していきます。
参考文献: リチャード・C・シュワルツ、マーサ・スウィージー 著『内的家族システム療法 第2版』第1章「内部家族システムの起源」より


