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トピックス by村本邦子

2008.11.27
2008年11月 対人援助学のすすめ

 11月9日、立命館大学応用人間科学研究科の校友会主催による「対人援助フォーラム2008 あきらめない対人援助」と題するイベントがあった。基調講演は、兵庫県養父市公立八鹿病院近藤清彦先生による「命を支える医療と音楽療法」。ALS(筋萎縮性側索硬化症)という難病を抱える患者さんやその家族に粘り強い支援を提供し続けてきたドクターだ。医療は、サイエンスの力によって命を救うだけでなく、アートの力によって「いのち」を支えることが重要であるという内容。理念も崇高ながら、先生ご自身の実践エピソードも感動的だった。

 アートのひとつとして、近藤先生が使っているのが音楽。院内に合唱団を組織したり、定例で院内コンサートをしたり、また、電子ハープを持って往診に行き、歌ったり。そう言えば、アメリカのPh.D時代、小さなハープを片手にターミナルケアの実践と研究をやっていた人がいたな。分科会では、卒業生で、音楽療法家として活躍中の西村ひとみさん(音楽療法士事務所音縁主催 http://www.eonet.ne.jp/~akisan-park/onen/index.htm)のセッションものぞいたが、音楽は人と人の境界を超え、つながりの空間を作り出す。音楽でなければならないことはないと思うが、誰でも手軽に入れることから、音楽が有望なツールのひとつになるのだろう。何より、自分の大好きなことを活かすという発想が人と人との出会いを可能にするのだと思う。つまり、音楽にさほど魅力を感じない人が、音楽療法を使ったとしても、あまり効果はないだろう。ドラマにしても、マッサージにしても、描画にしても同じだろう。

 「対人援助学」とは、今年で8年目になる立命館大学応用人間科学研究科が蓄積を重ねつつある新しい学問。人の援助に関わる仕事は、連携と融合による学際的なものであるはず。そこには、実践の積み重ねと現場の知恵を集大成し、さらに広く応用可能なものとして体系化して情報発信していく。「それっていったい何?」と、8年、私自身も考え続けてきたが、ようやくその神髄が見えてきたところだ。片方にサイエンス、片方にアートを。他者や世界に向けてよいことをすることが心身の健康の条件のひとつということを先月書いたが、対人援助が人を支え、自分をも支えるような円環的なものであるだろう。苦労はあっても、他者に喜んでもらえて、自分自身も喜べて、互いに元気になるような援助の在り方。これまでだって、ずっと志してきたものである。

 
 まだまだよちよち歩きで失敗も多いが、これからの発展を期待しているし、自分自身も貢献したいと思う。来年には、いよいよ対人援助学会がスタートする。準備会を含め、誰にでもオープンな場を目指している。皆さんもどうぞご一緒に!

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