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トピックス by村本邦子

2016.01.23
米軍基地のこと

 辺野古では緊迫した状態が続いているようだ。昨年末、沖縄で平和学会があり、地元の方に辺野古を案内してもらった。日本には米軍基地が133ヶ所あり、うち33ヶ所が沖縄にある。テント村にはたくさんの人々が集まり、交互にマイクを持ってスピーチしていた。大きな声で空虚なスローガンを掲げるものではなく、地に足のついた発言ばかりで、それぞれに胸に響いた。

 福島では4年も生まれ育った故郷に帰れないと言うが、自分は基地に故郷を奪われ、70年帰れないままだ。・・・本土の人たちは「平和だ、平和だ」と言っているが、沖縄にはいまだ平和は訪れていない。・・・沖縄が占領地だということは日本が占領されているということなのだが。・・・子ども時代、父親が基地の作業夫として働いていたため、軍のお蔭で生活していると思わされていた。返還後、軍がなくてもやっていけることがわかった。・・・子どもの頃、軍機墜落事故の火消しを手伝った。友達の親が死んだ。中学時代、少女が凌辱され、ごみ焼却場に捨てられた事件が近所であった。・・・

 沖縄戦で4分1もが殺されたという沖縄の人々にとって、切り捨てられ、道具として利用されてきた戦中・戦後はそのまま現在とつながっている。必ずしも知らなかったわけではない。実は沖縄に親戚がいて、中学生の頃、本土復帰記念に開催された海洋博覧会に行き、あちこち案内してもらった記憶がある。コカコーラやバリャリスオレンジ、ステーキとともに、軍のフェンス越しに見た戦車や兵士の姿は、そこがアメリカに占領された土地であることを強烈に印象づけていた。そして、そのもっと前には薩摩藩による搾取と支配があったのだ。

 平和学会のシンポジウムで、韓国の白永端氏がが、沖縄は東アジア分断構造解体の鍵となる契機になると言った。帝国・植民地主義、そして冷戦による重畳の影響の下、空間的に大きく分断された東アジアの葛藤が凝縮された場として発見することで、沖縄を「世界性」のなかで見、沖縄に限定されない場所に「沖縄」が表れるとする。

 日中の戦争トラウマの問題に関わり、東日本大震災を経由して、日米の関係を考えないわけにはいかないことを痛感している。三沢基地からも普天間からも、アフガンやイラクにアメリカ軍は出撃を繰り返してきたことを、どれだけの人が認識しているだろう。ハワイでも同様のことが起きている。真珠湾にあるミズーリ記念館では、今、知覧特攻隊の展示をやっているのだという。お正月には、知覧を訪れた。次は真珠湾だ。ひとつの地点から重層化した支配と抑圧の構造を見る視点を持つこと、特定の地点に「世界性」を見出すこと、今年の課題でもある。

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