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トピックス by村本邦子

2015.09.26
土のこと

 9月11日の豪雨で、除染の廃棄物を詰めた大型袋が、福島県飯舘村などの河川に流出し、環境省は24日、流出総数は439袋、41袋が未回収で、うち人が近づけない場所で見つかった36袋については「回収は困難」と発表した(毎日新聞 2015年09月24日)。この豪雨の時期、特別警戒下にあった宮城にいて、飯館村のフレコンバッグ(除染した土を入れる袋)が流れ出したニュースを知り、いったいどうなるのかと心配していたところ、次に飛び込んできたニュースは、回収した398袋のうち239袋で中身が流出、16袋が破損していたというものだった。環境省によれば、「草木類が大多数で、事故後4年半が経過しているため、放射線量は低いとみられる。環境への影響は少ないと考えている」とのことだが、それにしてもひどい話だ。

 この夏、飯館村を訪れた。国道114号線を下り、川俣を通って飯館村へ向かうと、あちこちの田んぼに緑の丘があるように見えるが、近づいてみると、黒い袋が高く積み上げられ、その上に緑色のシートをかぶせてあるという光景を多く眼にした。昨年は、福島の除染プラザにも行ったが、基本的に除染作業はとても原始的な方法のように思える。土で言えば、土を剥いで袋に入れ、「仮置き場」に積んでカバーを被せるというもの。

 前から気になっていた殺処分に抵抗して旧警戒区域内で牧場を続けている細川牧場と希望の牧場を訪問した。講談社ノンフィクション賞を取った『牛と土~福島、3.11その後』(眞並恭介、集英社)には、こんなことが書かれている。「生物の生育をささえる土壌ができるまでには、膨大な時間がかかる。1グラムの土の中には、微生物が1億から10億も存在するといわれる。」(p.94) 牛は大地そのもので、「牛が排泄した糞はやがて土になり、植物を育て、その植物がまた牛を育み育てるからであり、牛にとっての命は自然の循環のなかにあるのだ。また、それは、牛が死んで土に還る、つまり、自らを土に返すという生と死の循環のなかにあるのだ。また、それは、牛が死んで土に還る、つまり、自らを土に返すという生と死の循環を意味する。」(p.253)

 水が雨となり、川を通って山から海へと流れだし、雲となって雨になる・・・という循環については、昔、学校で習ったように思うが、土にも循環があることを知って、自然の偉大さに感動する。そう言えば、前に「汽水域」のことを書いたが(/info/2014/12/000357.php)、それは水と土の話だった。南三陸から石巻、多賀城と沿岸部を車で走ると、あちこちで復興のためのかさ上げ工事が行われていた。東日本大震災以後、いったいどのくらいの土がどこからどこへ移動しているのだろう?「津波で海岸線がすっかり変わってしまった」との声を耳にしたものだが、その後の地形も大きく変わってしまったことだろう。

 膨大な土が移動させられていることは、自然の命の循環にどんな影響を及ぼしていくのだろうかとため息をつくしかない。

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