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トピックス by村本邦子

2014.06.22
フェミニスト・アクション・リサーチ

 コミュニティ心理学会第17回大会を立命館大学で主催した。ちょうど十年前にもやったので、二度目となる。大会長を二度もやった人はいないのだけど、成り行きからつい引き受けてしまったので、やるからには自分が楽しいことをやるぞと決めていた。そのひとつが、フェミニスト・アクション・リサーチのワークショップ。ずいぶん昔からその研究手法に注目していた吉浜美恵子さん(ミシガン大学)と、昨年、たまたまご一緒することがあって、ラブコールを投げかけておいたのだ。フェミニスト・アクション・リサーチの手法を身につけたくて、何冊か本を買ってみたこともあるが、一人では意欲が沸かなくて、そのままになっていた。たぶん、日本でやっている人はほとんどいないのではないだろうか。元気な研究をやるには仲間がいるのだ。一緒に学び合える場を創りたかった。

 前半は、グループに分かれて、与えられた課題についての研究デザインを考えて発表しあうという演習だった。私のグループに与えられたのは、予算削減で、刑務所における大学教育プログラム予算がカットされたので、地域にある女性が収容されている刑務所でこれを継続(再開)することを求めるためのデータを集めるという課題。刑務所に大学教育プログラムがあるということ自体驚きだが、とにかく、女性囚の力を活用したい。そこで、卒業生たちを講師に招いて女性囚とチームを作り、プログラムの効果を調査するという案を考えた。プログラム修了生たちの再犯率や効果についてのデータを集めるのだ。チームに呼ばれた卒業生たちは、このプロジェクトに加わることで、再犯率を下げる効果もあるに違いないし、女性囚たちの学びや意欲につながるだろう。 

 この例は、実際にあったそうで、ミッシェル・ファインというフェミニストによるチェインジング・マインド・プロジェクトというものだそうだ。クリントン政権下で予算カットされた刑務所大学教育プログラムに対して、ニューヨーク州で実施された。地域の大学の学長と刑務所のラインを巻き込んでプロジェクトを立ち上げ、小さな予算を提供しあって、大学教員のボランティアが刑務所に行き、カリキュラムを作成し、研究方法の上級講座を開設した。服役女性18名を含む15名のコミッティを作って、調査を計画。274人の卒業生とプログラムを受けていない人とのデータを比較し、経済学者に分析してもらうとともに、刑務所内の風紀や安全への影響についても調査した。4年かけて調査を実施し、大学があることで再犯率が29.9%から7.7%に減り、刑務所内にも良い影響を与えていることを明らかにした。残念ながら、予算は再開しなかったが、このデータはその後のさまざまな助成事業に大きな影響を与えたそうだ。 

 この他にもいくつか例を教えてもらったが、優れた研究例を知るに勝る勉強法はない。大学に勤めていながらこんなことを言うのはいかがなものかと自分でも思うが、この話を聞いて、自分がいかに大学の力を見損なっているかに気づかされ、反省もした。この研究に協力した大学は、女性が学長を務める小さな大学ばかりだったそうだが、それでも大学は社会の大きなリソースになり得るのだ。というより、なるべきなのだ。日頃、研究のための研究に没頭している人たちを見ると腹立たしくうんざりしてしまうが、こんなクリティティブな研究が主流となっていけば、きっと世の中も変わるだろう。もっと学んでいきたい。 

 午後の演習は、フォトボイスだった。これについても、また紹介しよう。

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