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FLCスタッフエッセイ

2016.03.14 仕事
あなたのキャリア・アンカーは?~シャインに学ぶ「自分らしい仕事生活」とは

西 順子
              

 女性ライフサイクル研究所では、女性が人生で出会う問題についてご相談を受けていますが、そのなかに「仕事」に関わるテーマも含まれてきます。

 思春期・青年期の方とは、「自分とは何者か」を探索しながら将来の進路選択、学校選択、職業選択について、「自分らしい」選択ができるよう一緒に考えていきます。社会人の方とは職場におけるメンタルヘルスの問題から、転職や再就職の選択での悩みまでご相談を受けていますが、人生の節目においては、これまでの人生のプロセスを振り返りながら「何を大切にして、何を優先して、どう生きるか」という人生のテーマも含めて考えていきます。うつ病などで退職を余儀なくされた方にとっては、カウンセリングの目標に「社会復帰」を挙げる方も多く、人生にとって「仕事」は大きな意味をもっていると感じています。
 いずれにせよ、「仕事」の選択は、アイデンティティ(自己同一性)と関わる問題であり、「私は何者か」と自分を知ることと関わってきます。
 
 今回は、人生の節目で仕事や働くことについて見直すとき、「自分らしく仕事をする」ことを考える手がかりの一つとして、「キャリア・アンカー」を紹介したいと思います。キャリアとは、長期的な仕事生活の有り方に対して見出す意味づけやパターンのことを言いますが(金井、2002)、「自分らしく仕事をする」ためには、自律的にキャリアを考えてみることが大事と言われます。『キャリア・アンカー~ほんとうの自分の価値を発見する』(以下、本書と略す)から、仕事生活における自分らしさを考えるヒントを提供できればと思います。
 

■キャリア・アンカーとは

 キャリア・アンカーとは、組織心理学者エドガー・シャインによって提唱された概念で、「どうしても犠牲にしたくない、本当の自己を象徴する能力、動機、価値感」のことです。ある人がどんな難しい選択を迫られたときでも放棄することができない自己概念、自己イメージです。

 ふつう人々は、どのようなキャリアを歩んでいるときもそのキャリアのなかで広範なニーズを満たそうとします。しかし、これらのニーズが全て同等に重要というのではなく、すべてのニーズをも満たすことができないならば、どのニーズにもっとも優先順位をおいているのかを見極めることが大切になってきます。

 「アンカー」とは船の錨(イカリ)のことですが、錨がないと船は流されてしまうように、自分のキャリア・アンカーを知っていないと、外部から与えられる外部誘因(報酬や肩書など)の誘惑に負けて、後になって不満を感じるような就職や転職をしてしまうと言います。「これだと自分らしくない」と感じてしまい不満になってしまうそうです。
 よって、仕事に対する指向、動機、価値感、才能についての自覚をより明瞭に理解しておけば、キャリアにまつわる将来の意思決定はもっと容易になり、納得のいくものとなると言います。


■8つのキャリア・アンカー

シャインの研究によれば、キャリア・アンカーには8つのカテゴリーがあることがわかっています。下記に、その8つのアンカーを簡単に紹介しましょう。

①専門・職能別コンピタンス
このタイプの人がどうしてもあきらめたくないことは、その領域で自分の技能を活用し、そのような技能をより高いレベルまで伸ばしていくことのできる機会を手に入れることです。自分の技能に磨きをかけることで、自分らしさが生まれてきます。また、最重要なものは、仕事が彼らにとって挑戦的であることです。この人たちの関心は、あくまでも仕事の内容(コンテンツ)そのものにあります。

② 全般管理コンピタンス
経営管理そのもの関心をもち、ゼネラル・マネージャー(全般管理職)に求められる能力を身につけているタイプです。このタイプの人たちは組織の段階を上がり、責任ある地位につき、その立場にたって組織全体の方針を決定し、自分の努力によって組織の成果を左右したいという願望をもっています。専門・職能的な人々と違い、専門的な仕事に特化するのはよくないとみます。経営管理にアンカーをもつ人は、重い責任のある仕事を望みます。挑戦的で変化に富み、皆をまとめるような統合的仕事を好みます。

③ 自律・独立
このタイプの人がどうしてもあきらめたくないことは、仕事の枠組みを自分で決め、仕事を自分のやり方で仕切っていくことです。組織に所属している場合は、いつどのように仕事をするかについて自分の裁量で柔軟に決められる仕事に取り組みたいと思います。自律的な立場を維持するためにならば、あえて昇進や昇格のチャンスを断ることもあるでしょう。自律にアンカーがある人たちは、自分の専門分野の範囲内で明確に線を引き、時間を切って仕事をすることを好みます。

④ 保障・安定
このタイプの人がどうしてもあきらめたくないことは、会社の雇用保障、あるいはその職種や組織の終身雇用権などです。安全で確実と感じられ、将来の出来事を予測することができ、しかもうまくいっているとゆったりと仕事ができ、そんなキャリアを送りたいという欲求を最優先させるタイプです。保障・安定にアンカーのある人たちは、組織に縛られることを苦にしません。終身雇用権の代償として、進んで会社の指示に従う忠誠心や意欲があります。

⑤ 起業家的創造性
このタイプの人がどうしてもあきらめたくないことは、障がいを乗り越える能力や意欲をもとに、自分自身の会社や事業を起こす機会です。社会に対して自ら頑張れば、結果として事業を創造することができると証明したいと考えています。創造的な衝動は、新しい組織、製品、サービスの創造に向かいます。起業家タイプが他のアンカーと違うのは、自分が新しく事業を起こすことができるということを、とにかく試してみたいという熱い思いに取りつかれている点です。

⑥ 奉仕・社会貢献
どうしてもあきらめたくないことは、たとえばもっと住みやすい世界をつくる、環境問題を解決する、民族間の調和を図る、他の人々の援助をする、治安を改善する、新製品を開発して病気を治す等、なにか価値のあることを成し遂げる仕事を追い求める機会でしょう。このタイプの人たちは、何らかの形で世の中をもっとよくしたいという欲求に基づいてキャリアを選択します。奉仕にアンカーをおくタイプの人が望んでいる仕事は、自分の価値感にあう方向で影響を与えることが可能な仕事です。

⑦ 純粋な挑戦
自分のキャリアの特徴は、何事にも、誰にでも打ち勝つことができるということを自覚しているところにあるというアンカーの人たちです。彼らにとって「成功」とは、不可能に思えるような障害を克服すること、解決不能と思われてきた問題を解決すること、極めて手ごわい相手に勝つことです。専門・職能にアンカーをおく人たちと違うところは、問題が起こる専門分野ならどこでも挑戦したいというところです。

⑧ 生活様式(ライフスタイル)
このタイプの人のキャリアの条件の一つは、「生活様式(ライフスタイル)全体を調和させることができなければならない」ということです。何よりも柔軟であることを望みます。組織のために働くことに非常に前向きですが、ただし、自分の時間の都合に合わせた働き方が選択できるという条件を求めます。「自分らしさ」とは、特定の職能や組織と関わるよりも、自分のトータルの人生をどう生きているのか、自分がどこに落ち着いて住んでいるのか、家族とどのように接しているのか、といったことと関わってきます。

            
 以上、8つのキャリア・アンカーを紹介しました。皆さんは、どのキャリア・アンカーに馴染みがあり、「そうそう」と共感を覚えたでしょうか。自分のキャリア・アンカーについて洞察を深めることで、キャリア計画や選択をうまくすすめていくことができるとしています。本書では、自己診断用「キャリア指向質問票」を用いて点数をだし、キャリア・アンカーの1位~8位の順位が分かった後、「パートナーをみつけてインタビューしてもらう」ということを勧めています。質問票の結果と過去・現在・未来のキャリアをインタビューをしてもらい十分議論することで、自分の選択の仕方やパターンがわかると言います。


■私の場合

 私が、キャリア・アンカーという言葉を知ったのはちょうど10年前。女性ライフサイクル研究所の内部研修で「仕事」がテーマとなったときです。スタッフ各々が自分のキャリア・アンカーについて「キャリア指向質問表」にチェックをして順位を出した後、「仕事」についてワークシートを用いて自己を振り返る時間を持ちました。「仕事と聞いて何を連想するか?」「 子ども時代に仕事に関して家族からどんなメッセージを受け取ってきたか」「仕事とジェンダーに関してどんなメッセージを受け取ってきたか」「年齢と共にその捉え方は変化してきたか」「仕事についてどんな理想を持っているか」・・等について自分を振り返りました。そして、みんなで考えたことやそれぞれの体験を聞きあい、シェアしあいました。

 自分や他者のキャリア・アンカーを知り、人によって「仕事」について大切にしている価値感や欲求が違うのだということがわかり、目からウロコだったことを今も覚えています。人によってそれぞれが大切にしている価値感を元に、どんな職業につくか、どんな職場で働くか、どんな働き方をするか、自分の優先順位によって選択していること、また何に満足し、何は譲れないのか等が違ってくることを理解しました。
 
 ちなみに、私のキャリア・アンカーをみると(当時のプリントを見返すと)、1~3位は、①専門・職能コンピテンス、②自律・独立、③奉仕・社会貢献、でした。
 確かに、この10数年は、臨床家としてクライエントさんによりよい援助を提供できればと①に最も力を入れてきました。2年前、所長となってからは自然と③奉仕・社会貢献を意識するようになりました。でもキャリア・アンカーはあまり変わらないそうですので、なるほど・・と思います。

 そして、私自身のキャリア・アンカーには、子ども時代から「仕事」について見聞きし、経験してきたことが土台にあることに気づきました。それは母がずっと会社員として仕事をしてきたことです。仕事をする母を一つの「たたき台」のようにして、「自分は何がしたいのか、どんな働き方をしたいか」を、子どもの頃から漠然と考えてきたように思います。
 母とはキャリア・アンカーは異なりましたが、今も内的イメージとして印象に残っているのは、
仕事をしている時の母の活き活きしていた笑顔・元気な姿です。仕事をすることへの肯定的なイメージをもってこれたことに感謝したいと思います。

 フロイトは、人生で最も大切なことは「愛することと、働くこと」と言いました。社会・時代の変化のなかで、労働環境は厳しいと言えますが、そうした環境にあっても「自分らしく仕事をすること」を大切にしてほしいと願っています。


参考・引用文献 
『キャリア・アンカー~自分のほんとうの価値を発見しよう』エドガーH.シャイン著、金井壽宏訳、白桃書房。
『働くひとのためのキャリアデザイン』金井壽宏著、PHP新書。

2007.11.10 子ども/子育て
私の原点~「つながり」の体験

西 順子

 先日、助産師さんたちの研修があった。ご縁があってその1つのコマで周産期のケアについて話をさせていただいたが、その準備の過程で関連図書を読みながら、自分自身の体験を振り返ることとなった。

・・一人目のお産は、里帰り出産で、私が生まれた病院でだった。その時のお産は、あとで振り返ると「孤独」だった。出産後、すぐに母子分離され、赤ちゃんを抱かせてもらえたのは、次の日の夕方頃だったろうか。出産後、一寝入りした後、赤ちゃんと離れている切なさに、新生児室まで這うようにして、赤ちゃんに会いに行ったことは、今もその切なさの身体感覚として思い出す。
 その後、村本が女性ライフサイクル研究所を設立したと聞き、仕事が休みの日にはグループに参加するようになった。そこでは、女性学や女性心理学の本を読みながら、妊娠・お産など、女性の体験について語り合った。自宅出産の体験、助産院での出産体験、病院での体験など、さまざまな女性の体験を聴くなかで、いろんなお産があること、女性が置かれている状況、人それぞれの女性の生き方や選択があることを知った。そんななかで、二人目は納得のいくお産がしたいと、助産院を選んだ。

 一方、赤ちゃんとの生活にも慣れ始め、いい時間を過ごせるようになったというのも束の間。当時勤めていたクリニックには育休がないため産後8週明けで職場に復帰した。それについてはいろいろ悩んだが、自分も生き生きと生きること(仕事を続けること)は、子どもも生き生きと生きることにつながるはず、と決意したのだが、実際には、子育てと仕事との間で葛藤する日々だった。そんな思いもグループのなかで語った。また、女性の体験にも耳を傾けた。そんななかで、「自分だけじゃないんや」という発見と体験があった。仕事をしている、していないに関わらず、女性が「こういうお母さんであるべき」という周りからのプレッシャーや期待を受けて苦しんでいることを知った。「自分だけじゃない」、それだったら、私は私らしく、私らしいお母さんであったらいいんだと思えた。
 当時読書会で読んでいた『女はみんな女神』の本にも発見がいっぱいあり、女性が人生を主体的に生きるということはどういうことかについて多くのことを学んだ。特に「その真の代償は、それを得るために諦めるものであり、とらなかった道である」という言葉が胸を打った。諦めた道、喪失を受け入れることで、自分の選んだ道がよりはっきりと照らし出されるということも経験した。

 女性たちと語り合い、つながる体験(個人を超えて普遍的なものとつながる体験)のなかで、自分の人生を振り返り、自分自身の過去も現在も受け入れ、これから先の人生を見通せたこと、それが今の私の原点となっている。それが、スタッフや家族、周囲の人とのつながり、そして、今の仕事へとつながってきている。私が女性たちから感じさせてもらったこの体験~自分を肯定し、力を感じ、普遍的なものとつながる体験を、他の女性達にもつなげていくことができればと思う。私が女性たちに助けられ、支えられ、力づけられてきたように、女性が自分の人生の主人公として生きていくことのお手伝いができればと思っている。

 助産師さんの研修では、自分の体験も話した。その後、感想やご意見、助産師さん達の体験もお聞きしたが、立場は違うものの、助産師さん達と「つながり」を感じれたことも嬉しかった。また、助産師さん達の女性と子どもをサポートする思いにも力づけられた。講師の経験を通して、暖かいつながりを感じさせて頂いたことにも感謝したい。

(2007年11月)

2004.10.10 仕事
文化祭の季節に思う

西 順子

 10・11月は体育祭、文化祭の季節。子ども達が、体育祭や文化祭にクラスや仲間と一致団結して、一生懸命取り組んだり、笑ったり泣いたりしている姿は青春そのもので、輝かしい。私も学生時代は体育祭や文化祭が好きだったなぁと昔のことを思い出す。中学・高校時代の人形劇、お芝居、クラスの応援旗づくり、仮装行列、合唱コンクール、大学時代の定例コンサート・・、人と一緒に何かを創りあげること、目標に向かって力を合わすこと・・が結構好きだったなぁと。
 仕事のなかで、時々、そんな懐かしい感覚を思い出すときがある。
 今年前半では、6月末日の日本コミュニティ心理学会第七回大会。私は事務局長を引き受けたが、半年程前からいろんな人達と一緒に準備をすすめていった。こういう機会がなければ一緒に仕事をすることはなかったであろう方々とご一緒させていただいたことは、社会勉強にもなった。無事大会当日を迎えたが、大会の三日間はあっという間に過ぎた。三日目の最終日、盛況のうちに終ろうとしている・・とほっと安堵感と共に後片付けを始めていた時、会場を後にする名前も知らない会員の方々から「いい学会でした。ありがとうございました」「学会らしい学会でした」と暖かい一言をかけていただいた。よかったぁ、とほっと心から嬉しい気持ちになった。人に喜んでもらえたことで、全ての苦労が報われる気持ちだった。
 今年後半では、研究所の仕事として企業研修に取り組んだ。準備から実施まで何ヶ月かかけてスタッフと共に取り組む過程は刺激的であった。
 皆で協力しながら学びあえる過程、何かを創り上げる過程、目標に向う過程は面白い。ただ、学生時代と違うのは、責任が伴うということ、あるいはその責任の重さだ。最後まで責任を負うことで、より自分の体験として根付くことができるのだと思う。その過程は楽なことではないけれど、でも楽しみながら、面白がりながら、仕事をしていければと思う。

(2004年10月)

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