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FLCスタッフエッセイ

2014.11.30 性的虐待
性虐待の発見と対応・ケアを

                                            西 順子

今日はいいお天気の日曜日。掃除洗濯日和で嬉しい。久しぶりに一日家で過ごせる日は、命の洗濯デイ。

 少しほっと一息とSNSをちょこっと見てみると、友だちからの情報で、ある記事が目に留まる。弁護士ドットコムのニュース〈家庭内で起きている児童への「性虐待」、大人たちは子どもの「サイン」に気づけるか?〉。11月25日に子どもの性被害について考える内閣府主催のシンポジウムが開催されたと言う。

 記事は日本子ども家庭総合研究所で子どもの虐待問題を研究している山本恒雄さんの講演のもので、「子どもがぽろっと発したサインに大人が気づき、早期に調査・保護することが求められる」と語られていた。そして保護した後は、「トラウマとどう向き合うか、どう立ち直るかが問われます」とのこと。フランスでは、性被害にあった子どもに10年にわたって専属のソーシャルワーカーがつくと言う。日本でも中長期的支援を社会が保障していくことが求められている。

 山本さんとはちょうど2年前の12月、日本子ども虐待防止学会大会の分科会「身体と虐待~ソマティックアプローチの有用性」の発表者としてご一緒させて頂いた。ここにもぜひ紹介させて頂ければと、シェアします。⇒記事はこちら。

 ついでに、少し・・日頃思っていること・・。
 女性ライフサイクル研究所では1992年から性的虐待の問題取り組んできたが、子どもへの性虐待は家庭内にとどまらず、広い社会で起こっている。子どもの身近にいる顔見知りの人が加害者であることも多く、子どもの生活圏内、つまり家庭や親族内の他、保育所、幼稚園、学校、習い事、友達仲間・・等のなかで起こっている。加害者は大人から子どもも。性虐待が発見されたとき、子どものケアはもちろんのこと、子どもの家族への支援やケアも欠かせない。 

 そして、子どもへの防止教育と親や教師など子どもと関わる大人への予防啓発活動も重要だ・・。
研究所開設の初期は性的虐待の予防啓発活動に取り組んでいたが、今は被害にあった後の子どものトラウマケアに携わることがほとんどである。でも、予防教育・介入・保護・ケアと、第一次予防から第三次予防まで整っていければ・・と願っているので、また何か自分にできる予防啓発活動はないか・・ささやかなことでも自分にできることを自分の足元から考えてみたい。

 さて、そろそろ日も暮れてきた。明日からの一週間も、無事に乗り切れますように。一つ一つの仕事を丁寧に大切にしていければと思う。

■性的虐待の関連記事・文献
FLCエッセイ「カウンセリングの窓から~性暴力被害への理解と対応を」
FLCエッセイ「子どもへの性的虐待を考える~臨床的援助と予防と」
年報2号「チャイルド・セクシャル・アビューズとは何か」
年報2号「チャイルド・セクシャル・アビューズを子どもの様子から知る指針」
年報2号「サバイバーと関わる人のための手引き」
著作『子ども虐待の防止力を育てる~子どもの権利とエンパワメント』←性的虐待防止教育の実践のまとめ

2014.07.23 カウンセリング
カウンセリングの窓から~性暴力被害への理解と対応を

西 順子

 女性ライフサイクル研究所では1990年の開設当初より、「子どもへの性被害/性虐待」の問題に取り組んできました。子どもへの性的虐待防止教育の実践、意識啓発活動に始まり、性的被害の関西コミュニティ調査、グループセラピーなど新たな手法も試みてきました。こうしたプロセスを経て、私自身はこの10数年、トラウマ臨床に力を注ぎ、個人カウンセリングを通して回復支援に携わってきました。 

 トラウマ臨床は日進月歩と言われますが、カウンセリングに来談くださった方のお役にたてるよう、新しい情報に目を向けるよう努めています。どうすればトラウマとなった出来事が過去のこととなり、「今」を生きるお手伝いができるのか、心と身体の健康を回復していけるのか・・と、様々な心理療法を学ぶなかで、EMDRやソマティック・エクスペリエンス(SE)というトラウマ療法との出会いもありました。トレーニングを通してトラウマと身体について理解を深め(今も現在進行形)、身体の叡智(=生体に備わる自然治癒力)を知るなかで、その学びと経験を臨床に役立て、回復への道案内ができればと願って取り組んでいます。生命には、回復力、自然治癒力が備わっていることを尊いことと思います。

 一方で、社会の中で性暴力被害が後を絶たないことには痛みを感じます。女性ライフサイクル研究所でのカウンセリングは、性暴力被害の長期的影響(子ども時代のトラウマ)へのご相談を受けることが多いですが、病院臨床では性暴力被害直後あるいは性暴力が発覚した後の短期的影響について、特に子どもやご家族のご相談を受けることが多いです。子どもへの性暴力が社会問題として認知された今も、子どもへの性暴力/性虐待が後を絶たないことには胸が痛みます。

 コミュニティ心理学の予防の概念によると、第一次予防は「発生予防」、第二次予防は「早期発見と早期対処、危機介入」、第三次予防は「回復への支援と再発予防」となります。近年、性暴力被害者支援センターが各地で立ち上がっていますが、公衆衛生の問題として、第一次予から第三次予防まで、予防の観点から更なる支援体制の充実が求められます。

 まず私が臨床で関わっているのは第二次予防、第三次予防ですが、子どものトラウマ臨床においては、さまざまな工夫が必要だと実感しています。子どもは性暴力被害の影響を言葉で表すことは難しく、行動上の問題や身体症状として現れることが多くなります。特にトラウマの回避反応、解離症状は表面的には見えにくいため、アセスメントが必要です。
 子どもに「どうやって、しのいでいるの?」と対処を尋ねると、様々な対処戦略を使ってしのいでいることがわかります。しかし、回避や解離(トラウマとなった出来事を切り離すこと)は一時的には役立ちますが、解離された「恐怖」が残ってしまう等、メンタルヘルスに長期的な影響を与えます。恐怖を少しずつ消化・解放しながら、生活全般が安定し落ち着いた後に、トラウマ記憶に焦点をあて、トラウマの中核にある恐怖を消化しておくことが必要と考えています。

 被害直後のケアから、中・長期的な影響のケアまで、子どもや家族に対して、医療、心理、司法、教育、福祉・・など多層的な支援が必要です。これからもトラウマ臨床に携わりながら、第一次予防から第三次予防まで性暴力被害者への支援体制が整うことを願い、被害者支援機関・支援者との連携、協働、ネットワークづくりに努めていければと思っています。

 なお、下記に性暴力被害にあった直後に見られる反応とご家族や周囲で支える方に求められる対応についてまとめました。早期発見と早期対応の参考にして頂ければと思います。

※社会資源の一つとして、被害者支援ポータルサイト(立命館大学法心理・司法臨床センター)も紹介させていただきます。⇒ http://www.lawpsych.org/higai

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■被害直後に起こりやすい反応

直後のショックが落ち着いたあとも、しばらく不安定な時期があります。一ヶ月後くらいまで、次のような症状がみられることもあります。疲労や苦痛がひどい時、長引く時には、専門機関に相談しましょう。

自分の気持ちがひどく動揺し、混乱していると感じる。
□精神的にとても不安定だと感じる
□抑えられないような怒りや悲しみを感じる
□気分の浮き沈みが激しく、落ち着かない

心や身体が麻痺してしまう
□事件の時や前後の記憶がない
□事件の時に身体が凍りついたような感じがした
□事件が他人事のような感じがする

事件に関することが頭によみがえってくる
□考えたくないのに頭に浮かぶ
□事件の夢を見る
□事件を思い出させるようなものを避けるようになる

落ち着かない
□夜寝つけない、眠りが浅い、途中で眼を覚ます
□イライラして落ち着かない
□集中力がなく、テレビが見れない、本が読めない
□いつも警戒してビクビクする、物音に敏感になる

■回復のために

被害後に、身体と心に起こる変化を理解して、回復のために必要なケアをしてあげましょう。あなたのペースで、できることからはじめましょう。

からだと心を休め、いたわりましょう。
□十分な休息をとりましょう。
□十分な睡眠と、健康的な食事をとりましょう。
□リラックスできることをしましょう。
 (呼吸法、瞑想、気持ちが落ち着く音楽を聴く等)

自分の生活を取り戻しましょう。
□マイペースを心がけましょう。
□いつもの日課を維持するようにしましょう。
□適度な運動をしましょう。
□気分転換をしましょう(趣味、読書など)。
□日記をつけましょう。

助けを求めましょう。
□信頼できる人に、体験や気持ちを話して支えてもらいましょう。
□信頼できる人に、そばにいてもらいましょう。
□あなたが必要としていることを伝えましょう。

■ご家族や周囲の方へ
 自分の大切な家族や友人が被害にあうと、周りの人も動揺してしまい、どうしてあげたらよいかと途方に暮れてしまうことでしょう。あなたの大切な人を支えるために、できることがあります。多くの人は、自分のことを大切に思ってくれる人とのつながりに支えられて、回復していきます。

安全が第一です。安全な場所で安心して過ごせるように、できることを考えてみましょう。
□傍にいて、一緒に時間を過ごしましょう。
□日常生活の援助や外出する時の付添など、相手への関心、配慮、思いやりを示しましょう。

話をじっくりと聞きましょう。
□無理に聞き出すことは禁物です。
□気持ちや反応を認めましょう。批判したり、自分の考えを押しつけてはいけません。
□自分を責めている場合には、「あなたは何も悪くない」と話すことも役に立ちます。

そして、ご自分もいたわり、セルフケアにも心を配りましょう。

●女性ライフサイクル研究所では、性暴力被害についてのご相談を受けています。
 カウンセリングのページも合わせてご覧ください。

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[参考文献]
村本邦子(2004)「性被害の実態調査から見た臨床的コミュニティ介入への提言」心理臨床学研究  vol22、No.1
村本邦子、西順子、前村よう子(2005)『子ども虐待の防止力を育てる』三学出版。
パトナム,F W(2011)「性虐待を受けた子どものアセスメントと治療」フランクパトナム来日講演資     料、フランクパトナム招聘委員会。

2011.12.10 性的虐待
子どもへの性的虐待を考える~臨床的援助と予防と

西 順子

 1992年、女性ライフサイクル研究所では年報2号で「チャイルド・セクシャル・アビューズ」を特集した。チャイルド・セクシュアル・アビューズとは、家庭内で起こるか家庭外で起こるかを問わず、子どもへの性的な虐待(力の濫用)を指している。当時はまだ、「それは病んだ国のことで、日本には性的虐待はない」と言われていた時代であった。

 しかし、子どもへの性的虐待は、私たち自身の問題であると認識し、社会的な働きかけを行ってきた。子どもをもつ母親として性被害から「子どもをどう守れるか」という問題と、性の対象とされてきた女性の問題としてである。

 年報2号は、各社新聞で取り上げられ、全国各地から、購読の注文が届き、あっという間に売り切れとなった。予防啓発活動として、子どもへの防止教育プログラムを開発して防止教育を実施したり、専門家への意識啓発として1990年代は、心理臨床学会で自主シンポジウムを開いたりしてきた。そして、時代は変化し、2000年には児童虐待防止が成立、子どもへの性的虐待も社会的に認知されるようになった。防止法から早10年過ぎたが、子どもの置かれている現実は変わったであろうか。

 子どもへの性的虐待はいまもなお起こっている。ただ、希望を感じるのは、性虐待を子どもが打ち明けたとき、母親がその声を否認せず、受けとめようとしていることである。親に話せないまま、被害の記憶を失っていたり、あるいは、親に話したとしても、否認され、否定されて受けとめてもらえなかったことで、トラウマ反応が大人になってから顕在化することも多いが、今、母親らがしっかりと子どもの現実と向きあおうとしている。

 日頃の臨床のなかで、子どもの性的虐待、性被害の問題と遭遇する。多くが、子どもへの性的虐待が発覚したとき、母親がどうしたらいいかと戸惑い相談に来られる。子どもが母親に被害を打ち明けてのことである。その声を受けとめた母親が、どうしたらよいのかと助言や子どもへのケアを求めている。加害者が顔見知りであることも多く、子どもも母親もその衝撃は大きい。安全感とともに、信頼感を壊される。加害者は子どもが信頼すべき大人の場合もあるし、子どもの場合もある。同じ家族、学校、地域コミュニティのなかで起こった被害に、被害にあった子どものケアはもちろんのこと、今後どう生活していけばよいのか、生活の問題や、人生の問題とも関わってくる。そのなかで、母親たちが、「子どもの安全を守る」のにどうすればよいかと、悩み、葛藤しながら、子どもをケアしようと懸命になっておられる姿を目の当たりにしてきた。

 カウンセリングでは、子どもとのプレイセラピーや面接のなかで、トラウマ反応を解放できるようにアプローチしているが、同時に母親への心理教育や母が子どもを支えるサポートを提供している。この20年のなかで、トラウマの解放に有効な様々なアプローチが我が国にも紹介されてきているので、トラウマによる心身への反応を緩和していくことが可能となった。もちろん、1人として同じ人はいないので、個々の回復の文脈に即して考えていかなければならない。回復の文脈をどうつくっていくかは、何よりも母親から学ばせて頂くことが多く、母親との協働作業となると言ってもよい。子どもが自分の自信を取り戻し、回復していくとき、そこには母親の並々ならぬ努力と支えがある。母親をエンパワメントしていくことが、子どもの回復の鍵になると実感している。子どもは安全の基地さえあれば、どんどん外へと世界を拡げていくからである。

 子どもが自分の強さ、自信をとり戻し、力強く回復する姿、そしてそれを支える母親の姿に心を打たれる。しかし、子どもが性的に濫用される現実が変わらなければと思う。

 日頃は臨床が仕事ではあるが、まだまだ予防啓発活動、社会への働きかけが必要なことを実感している。被害者はもちろん、加害者をつくらない社会のために、子どもの権利が尊重されるコミュニティでなければと思う。虐待とは、子どもの境界線の侵犯である。私たち誰もが、境界線を尊重される権利をもっている(境界線とは、自分の安全や人格やプライバシーを守るために、「私の体」「私の気持ち」「私は私」という感覚のこと)。まずは大人が子どもの身体的、性的、心理的境界線を尊重していかなければならないと思っている。 

 震災以後、Twitterを始めて、今社会のなかに、性暴力に取り組むさまざまな団体が立ちあがっていることを知った。私自身もまた、予防啓発として自分にできることからと、子どもを性的に濫用されることがなくなるよう、性的虐待は子ども達の身近で起こっていること、その問題意識を伝えていきたいと思う。

※参照: 子どもの性的虐待の予防、発見、ケアに関する文献
「チャイルド・セクシャル・アビューズとは何か」年報2号(1992)、村本著。
「チャイルド・セクシャル・アビューズを子どもの様子から知る指針」年報2号(1992)、村本著。
『子ども虐待の防止力を育てる~子どもの権利とエンパワメント』(2005)村本、西、前村著、三学出版。
『FLC子育てナビ3: 子どもが被害にあったとき』(2001)窪田、村本著、三学出版。

(2011年12月)

2011.10.12 性的虐待
見知らぬ人からの手紙

村本邦子

 「未知の人間からの手紙をお許しください。ただし、先生のご所属もはっきりしないので、これが先生のもとに届くかどうかも定かではありません」と始まる手紙が、おそらくはあちこち回って、私の手元に届いた。

 大学を定年退職したという現在八十歳のフランス文学者を名乗る男性からだった。たまたま、この夏、性的虐待を扱ったNHKの番組に出演したのだが、これを、パートナーと一緒に見たのだと言う。詳しいことはわからないが、その時の状況の描写からは、何か深い思いや背景があるのだろうと感じられた。そして、「もし私がドフトエフスキーであったなら、先生に向かって、全人類の名のもとにお礼を申し上げていたことでしょう。先生がずっとご健在であられることを心から願っております」と結ばれていた。

 最近はマスコミ関係の依頼をほとんど断ってきたが、真面目に制作されている番組は、それだけ人々の胸に届く力を持っているのだろう。いささか大袈裟だという気もするが(文学者らしいというべきか)、それでも、年輩の男性が、私たちの仕事に何がしか感銘を受け、わざわざこうしてエールを送ってくださるというのはとてもありがたいことだと思う。実は、この番組には何通かのお手紙を頂いており、年輩の男性(やはり大学の先生)からのエールが他にもあった。

 戦時性暴力はじめ人道に反する罪、薬害エイズ、原発と戦後日本の建て直しの過ちを思うとき、とても哀しい気持ちになる。父や祖父、曾祖父の世代にもっとちゃんと頑張って欲しかった。女や子どもを保護しようとする男らしさが翻ると、女や子どもを凌辱する力となる。もちろん、男に強さを求める女にだって責任の一端があるし、人命より経済効率優先の価値は日本に限ったことではないけれど。

 先週、南京で行った「歴史のトラウマと和解修復」のセミナーで、祭壇に供える「思い出の品」として、家永三郎さんの写真を持ってきていた女性があった。大学の教え子だったそうである。当時は単位のためだけに授業を取っていたが、ある時、家永先生が学生たちのいい加減な態度に、顔を真っ赤にして怒ったことがあったという。彼女は、「その時はわからなかったけれど、年をとった今、先生の気持ちをこうして受け継いでいます」と語った。「そうだそうだ、心ある先達は、実はあちこちに確かにいたんだ」と思うと、泣けた。

 一方で、教育というのは、その時すぐには手応えが感じられなくても、こうして十年、二十年経ってから芽吹いていくものもあるのだと思った。自分なりには日々、頑張っているつもりでも、無力に感じることは少なくないけれど、後輩や教え子たちが頑張ってくれている姿を見ることは励みだし、たしかに感謝の気持ちに満たされる。つい、世の中の残念で情けない部分に眼が向いてしまうが、上の世代から下の世代へと確かに繋げていかなければならない希望を見失わないようにしなければ。大切なことを確認させてくれた見知らぬ方に感謝して。

(2011年10月)

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