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FLCスタッフエッセイ

2015.04.17 女性の生き方
日々の小悩み・イライラに――文庫『週末、森で』ご紹介――

福田ちか子

 「あ~っ、またやっちゃった」「あの人苦手だなぁ...」「あれとあれとこれもしなくっちゃ」などなど、日々のプチストレス。解消する間がなく明日がやってきて、同じことがくり返し続くと、落ち込みモードに突入してぬけだせなくなることもある。そんなときに,そっと背中を押してくれたり,ふっと視野を広げてくれたりするような一冊として,益田ミリさんの『週末、森で(益田ミリ2009 幻冬舎文庫)』を紹介したい。

 この本の主な登場人物は,思いついて森の近くで田舎暮らしをはじめた翻訳家の早川さんと,経理部ひとすじ14年のマユミちゃんと,旅行代理店勤務のせっちゃん。週末になると,マユミちゃんやせっちゃんが早川さんを訪ねては,ハイキングにでかけたりカヤックを楽しんだりして,また都会の暮らしに戻っていく。

 ある日のマユミちゃんは,仕事が忙しくてごきげんななめ。残業の帰り道に,その日がお母さんの誕生日だったことを思い出して,「どうしよう,毎年プレゼントを送ってるのに...」と焦り始める。ちょうどお店は閉まり始める時間帯で,いくつか心当たりのお店に向かうがすでに閉店。宅配か,明日の昼休みにダッシュで買うか...とひとしきり考えて,毎年の贈り物ができなかった自分に落ち込む。

そんなとき先週末に早川さんとカヤックをしたことを思い出す。向こう岸のカモが見たいのに,こいでもなかなか進みたい方角に進めなかったマユミちゃんに,早川さんが教えてくれたコツは「手もとばっかりみないで自分が行きたい場所をみながらこぐと近づけるよ~」だった。ふとそのことばを思い出したマユミちゃんは,ひとまずプレゼントのことは置いておいて,お母さんに電話をかけて「お誕生日おめでとね」と伝えることにした。

 週末,森で過ごした体験が,じんわりと平日をあたためて,マユミちゃんとせっちゃんが,日々のプチストレスをやり過ごす様子が描かれている。

日々のプチストレスがたまったとき,「もっと自分がちゃんと頑張らなくちゃ」と自分を責める方向に偏りすぎることや,「あいつが悪い!!」と相手を責める方向に偏りすぎることは,バランスを崩して落ち込みモードに突入しやすくする。

相手を責めるのでも自分を責めるのでもなくふっと肩の力を抜いて自分の気持ちをながめる,というプチストレスを溜めない極意を,日々の生活の中で活用するアイディアがいっぱい詰まっているところが,とても素敵だと思う。

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